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Influenza座談会

バロキサビル マルボキシルの是非

齋藤玲子喜田宏高下恵美河岡義裕

インフルエンザ Vol.20 No.4, 7-13, 2019

河岡(司会) 2018年に発売が開始されたバロキサビル マルボキシル(以下バロキサビル)について,さまざまな立場の先生方にお集まりいただき,多角的なお話をうかがいたいと思います.まずバロキサビルはどのような薬なのか,概略をご説明ください.
高下 インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼはPA蛋白質,PB1蛋白質,PB2蛋白質の3つのサブユニットで構成されていますが,バロキサビルはその中のPA蛋白質を標的とした抗インフルエンザウイルス薬です.インフルエンザウイルスは,ウイルスmRNAを合成する際にPA蛋白質のキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性によって宿主のキャップ構造を切り取り,プライマーとして利用します.その活性を阻害することでウイルスの増殖を阻害します.
喜田 ウイルスが増えた後に効くノイラミニダーゼ阻害薬と違い,バロキサビルはウイルスのRNAを伸長させない,すなわち増やさない画期的な薬です.
河岡 非臨床の開発段階で,耐性株は分離されていたのでしょうか.
齋藤 メーカーの出した論文では,動物実験では耐性株が出ず,ヒトでの治験が開始されて初めて,耐性ウイルスが出ることに気付いたということでした.フェレットを使ったH1の耐性株の実験や,H3での耐性株の感染実験も行われていますが,やはり耐性株は出ていません.
河岡 マウスなどの動物実験では体内での代謝の違いを考慮してバロキサビルを頻繁に投与しているため,血中濃度が高いまま維持されているので,ウイルス量が減り,耐性ウイルスも出にくくなるのでしょう.しかしヒトでは1回投与なので,始めは血中濃度が高くても,その後はずっと下がっていくので,出現した変異株を抑えきれない環境になっているのだと思います.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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