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ウイルスよもやま話

スペインかぜ その1 100年前に起こった疫学史上最悪の出来事

渡辺登喜子

インフルエンザ Vol.19 No.2, 49-52, 2018

今回から新シリーズ「ウイルスよもやま話」が始まります.これまでの「専門家に聞くインフルエンザウイルス講座」のご担当だった鹿児島大学の小澤真先生からバトンを受け取りました東京大学医科学研究所の渡辺登喜子です.インフルエンザウイルスに加えて,ほかのウイルスについての話題も提供したいと考えています.
今からちょうど100年前の1918年に疫学史上最悪の出来事であるスペインかぜの大流行が起こりました.シリーズ第1回目は,このスペインかぜの話題から始めようと思います.
『時を遡ること100年,第一次世界大戦の最中,原因不明の病原体が人類を襲い,世界中を混乱に陥れた.はじめは単なるかぜだと思っていたのに,症状が急激に悪化し重篤な肺炎を発症して,あっという間に死に至る―そのような恐ろしい感染症である.感染者の肺の損傷は激しく,通常,空気で満たされているはずの肺胞に滲出液が溜まり,そのため患者はチアノーゼを起こして,全身の皮膚が青紫色を呈している.その病原体は瞬く間に世界中に拡がった.街は病人や死にゆく人々で溢れかえり,遺体は葬儀屋や家々に積み上げられ,腐敗していった.』―このように描写すると,まるでホラーじみたゲームや小説上の出来事のように聞こえますが,これが実際に1918~1919年に起きたスペインかぜの流行です.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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