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巻頭言

インフルエンザ感染症の予防と治療に関する新展開

木戸博

インフルエンザ Vol.16 No.2, 5-6, 2015

毎年くり返される季節性インフルエンザによる乳幼児と高齢者の感染重症化,高病原性鳥インフルエンザのヒトへの感染拡大防止を目的とした予防と治療に関する感染症対策が進んでいる.本稿では,これらについて最新知見に触れたい.
「1.抗インフルエンザ薬の展望」インフルエンザウイルスの出芽を阻害するノイラミニダーゼ阻害薬が臨床現場で使用され治療効果が確認されてきたが,これに加えRNAポリメラーゼ阻害薬も最近使用が承認された.これらの薬剤では耐性株の出現が問題となっており,そのためウイルス増殖阻害部位や作用機序の異なる薬剤を準備しておく必要がある.またすべての抗インフルエンザ薬は,増殖阻害効果が強いほど,また薬剤の使用が早いほど,体内ウイルス量が減少して,その結果症状は軽減されるものの獲得免疫としての抗体産生が不十分となり再感染率が高くなる.このことは,動物実験,臨床試験で確認されてきたが,最近常用量のノイラミニダーゼ阻害薬のオセルタミビルで,effector CD8+ T細胞とmemory CD8+ T細胞の両方の機能が著明に低下することが明らかになり,再感染率増加の理論的背景が明らかになった.一方,弱いアジュバント作用をもつ既存薬のマクロライド薬をノイラミニダーゼ阻害薬に併用することで,抗体産生能の低下が抑制されることが見出され,医療現場でその効果が期待されている.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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