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公衆衛生(インフルエンザ)

Pandemic(H1N1)2009ウイルスと耐性

高下恵美

インフルエンザ Vol.12 No.3, 71-76, 2011

 Pandemic(H1N1)2009(A/H1N1pdm09)ウイルスは現在,A香港型(A/H3N2)およびB型ウイルスと混在して流行を続けている.世界各国で分離されたA/H1N1pdm09ウイルスのほとんどはNA阻害薬に対して感受性であるが,NAに特徴的なアミノ酸変異(H275Y)をもつ薬剤耐性株が散発的に検出されている.本稿では日本国内で2シーズンにわたり実施されているA/H1N1pdm09ウイルスの抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスから得られた知見をまとめる.また最近報告されたNA阻害薬に対し多剤耐性を示す耐性変異について紹介する.

KEY WORDS
■ノイラミニダーゼ阻害薬 ■薬剤耐性インフルエンザウイルス ■抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス ■Pandemic(H1N1)2009

はじめに

 2010年8月10日,Pandemic(H1N1)2009(A/H1N1pdm09)に関して,警報フェーズ6相当のパンデミック期からポストパンデミック期への移行が世界保健機関(WHO)により宣言された.日本国内においては,インフルエンザの流行状況を踏まえて2011年4月1日に新型インフルエンザ(A/H1N1)を通常の季節性インフルエンザとして取扱い,その対策も通常のインフルエンザ対策に移行することが発表された.A/H1N1pdm09ウイルスは現在,A香港型(A/H3N2)およびB型ウイルスと混在して流行しており,世界各国でウイルスが検出されている.引き続きインフルンザの流行動向には注意が必要である.
 A/H1N1pdm09ウイルスは2009年の出現当初からM2蛋白にS31N変異をもっており,その結果M2蛋白を標的とする抗インフルエンザ薬アマンタジン(商品名シンメトレル®)に対して耐性を示していた1).そのためA/H1N1pdm09の治療には,ノイラミニダーゼ(NA)蛋白を標的とする抗インフルエンザ薬オセルタミビル(商品名タミフル®)またはザナミビル(商品名リレンザ®)がWHOにより推奨されてきた.世界各国で分離されたA/H1N1pdm09ウイルスのほとんどは,オセルタミビルおよびザナミビルに対して感受性であるが,NAに特徴的なアミノ酸変異(H275Y)をもつオセルタミビル耐性株が散発的に検出されている.日本は世界最大の抗インフルエンザ薬使用国であることから,薬剤耐性A/H1N1pdm09ウイルスの検出状況を逐一把握し,国内のみならず全世界に向けて速やかに情報発信することは公衆衛生上きわめて重要である.そこで国立感染症研究所(感染研)と全国の自治体に77カ所設置されている地方衛生研究所(地衛研)は共同で,2009年9月からオセルタミビルおよびザナミビルに対する耐性株サーベイランスを実施してきた.2010年には新たにペラミビル(商品名ラピアクタ®)およびラニナミビル(商品名イナビル®)の国内販売が開始されたため,対象を4薬剤に拡大した耐性株サーベイランスが必要となった.そこで2010/2011シーズンからは,ペラミビルおよびラニナミビルを加えた4薬剤に対する耐性株サーベイランスを実施している.本稿では2シーズンにわたる抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスから得られた知見を紹介する.

1 インフルエンザウイルスサーベイランス

 インフルエンザに係る日本国内のサーベイランスは感染症発生動向調査として位置付けられ,年間を通じて実施する「患者発生サーベイランス」「ウイルスサーベイランス」「インフルエンザ重症サーベイランス」と期間を限定して実施する「学校サーベイランス」からなる.「ウイルスサーベイランス」は国内で流行するインフルエンザウイルスの型・亜型,抗原性,抗インフルエンザ薬に対する感受性などの変化を監視する目的で行われる.表1にウイルスサーベイランスの体制を示す.

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