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特集 臓器の記憶と血管代謝ニッシェ

T細胞老化に起因する炎症性記憶の形成機構

山下政克桑原誠

血管医学 Vol.16 No.4, 55-61, 2015

「Summary」T細胞は,免疫担当細胞の中でも最も強く細胞老化の影響を受ける.老化したT細胞は,機能が低下するだけでなく,さまざまな炎症性因子を発現しSASP(senescence-associated secretory phenotype)様の形質を獲得することで炎症性記憶の形成を促進し,それが加齢に伴う易感染性,慢性炎症性疾患や発がんの増加につながると考えられている.しかしながら,T細胞老化やT細胞SASPの分子機構については不明な点が多く残されている.筆者らは最近,腫瘍抑制因子Meninを欠損したCD4 T細胞が早期に細胞老化様の形質を示すことを見出した.さらに,Menin下流に位置し,T細胞SASPの獲得において重要な役割を担う分子として転写抑制因子Bach2を同定した.本稿では,T細胞老化に起因する炎症性記憶の形成機構について,筆者らが見出したMenin-Bach2の役割を中心に概説する.
「Key words」Menin,Bach2,SASP,エピジェネティクス

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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