<< 一覧に戻る

特集 臓器の記憶と血管代謝ニッシェ

腫瘍血管代謝ニッシェとがん細胞悪性化の相互連関

佐藤靖史

血管医学 Vol.16 No.4, 49-53, 2015

「Summary」がん組織では,腫瘍血管が新生されても未熟な構造のため,循環動態は不良で低酸素状態が持続している.低酸素状態のためにがん細胞の浸潤能は亢進し,未熟な腫瘍血管はがん細胞が血管内に侵入する経路を与えるため,がん転移が助長される.腫瘍血管が正常化すると,循環動態の改善により低酸素は解除され,がん細胞の浸潤能は低下し,免疫細胞のがん到達性が増すことによってがん免疫は賦活化される.
「はじめに」正常な毛細血管は,血管内皮細胞による管腔構造と,その周囲を血管基底膜に包まれて被覆する壁細胞(ペリサイト)の2種類の細胞によって構築されている.これに対して,腫瘍血管は壁細胞による被覆が不十分か,あるいは欠如しており,しかも血管内皮細胞同士の接着も不完全なことから,血管透過性は亢進し血液成分が血管外に漏れやすく,がん細胞が血管内に侵入しやすい未熟な構造を呈している.
「Key words」腫瘍血管,低酸素,血管正常化

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る