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新しく解明されつつある血栓の増大と成長の分子細胞機構

オーバービュー―成長増大する血栓:新たな治療標的―

丸山征郎

血管医学 Vol.12 No.2, 9-12, 2011

血栓の陰陽
 血栓は,血管破綻部位を止血するための“生理的,生体防御的な血栓”と,血管内に生じて血管を閉塞して末梢部位に虚血性病変を引き起こす“病的血栓”に大別することができる.すなわち“良い血栓”と“悪い血栓”である.これは生体反応にすべからくいえることである.しかし,ことはそれほど簡単ではない.

血栓の陰陽(続き)

エンドトキシンであるリポ多糖体(lipopolysaccharide;LPS)を代表とする多くのpathogen associated molecular patterns(PAMPs)類やdamaged associated molecular patterns(DAMPs)が,単球/マクロファージを活性化して, 組織因子(tissue factor;TF)やplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の発現をアップレギュレートし,血管内皮細胞にもTF,PAI-1の発現を誘導し,トロンボモジュリン(thrombomodulin;TM)や組織プラスミノゲン活性化因子(tissue plasminogen activator;t-PA)の発現をダウンレギュレーションすることは,小さな血管の場合であれば,血管を丸ごと血栓で封鎖して,侵襲部位でのトロンビンや炎症性サイトカイン類,PAMPs,DAMPsなどの全身化を防護しているというメリットもあるからである(図1).

生体は侵襲を極力“局在化して,全身化を防ぐ”というのは重要な生体防御反応であるからである.も多発する血栓である.
 このようにみてくると,“良い血栓と悪い血栓”と単純には一面化して考えることはできないということになる.悪いのは行き過ぎた生体防御的血栓,すなわち血管内にせりあがってくる血栓であり,微小循環系といえども多発する血栓である.

血栓の運命のダイナミズム

 血栓には生体防御的な血栓,病的血栓を問わず増大するベクトルと縮小するベクトルがある(図2).

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