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喘息/COPDの基礎研究最前線

アレルギー応答を負に制御する抑制性受容体アラジン-1 の発見

人見香織田原聡子渋谷彰

International Review of Asthma & COPD Vol.13 No.2, 21-27, 2011

 アレルギー発症において肥満細胞は重要な役割を担っている.しかし,肥満細胞の活性化制御の機構はいまだ不明な点が多い.われわれはヒトおよびマウスの肥満細胞に発現する新規抑制性受容体アラジン-1を同定し,さらにアラジン-1遺伝子欠損マウスを用いた解析から,これが肥満細胞からの脱顆粒を抑制し,アレルギー反応を負に制御する分子であることを明らかにした.ヒトアラジン-1も肥満細胞上に発現していることから,マウスと同様にアレルギー応答を負に制御していると考えられる.そのため,アラジン-1はアナフィラキシーをはじめとしたアレルギー性疾患の予防や治療における有望な標的分子となることが期待される.

はじめに

 アレルギー性疾患に罹患している人は世界中のおよそ25%以上にも及び,近年ますます増加傾向をみせている.アレルギーの原因である抗原(アレルゲン)が体内に侵入するとB細胞よりIgE(immunoglobulin E)抗体が産生される.この抗原特異的なIgE抗体は肥満細胞上に発現している高親和性IgE受容体に結合する.その後,再び同じ抗原に暴露されると,抗原は肥満細胞上のIgE抗体に結合し,IgE受容体が架橋され肥満細胞へ活性化シグナルが伝達される1,2).活性化した肥満細胞は,細胞内に有している顆粒を放出し(脱顆粒),その中に含まれるヒスタミンなどの化学物質が分泌される.この化学物質によりアレルギー炎症が発症する3).したがって,アレルギー発症において肥満細胞がもっとも重要な役割を担っている.肥満細胞の活性化を抑制する受容体としては,FcγRIIB,PIR-B,gp 49B 1,MAIR-I(CLM-8,LMIR 1,CD300a),MAFA,SIRP-αなどが報告されている1,4).これら抑制性の受容体は,細胞内にimmunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif(ITIM)様モチーフを有しており,ITIM内のチロシン残基のリン酸化によりsrc homology 2 domain-containing tyrosine phosphatase-1(SHP-1),SHP-2,src homology 2-domain-containing inositol phosphatase(SHIP)といった脱リン酸化酵素と会合して,抑制性シグナルを伝達する.しかし,肥満細胞の活性化制御の機構はいまだ不明な点が多い.われわれは,肥満細胞に発現し,アレルギー性反応を抑制する働きをもつ受容体“allergy inhibitory receptor 1(Allergin-1;アラジン-1)”を同定した5).
 本稿では,アラジン-1の構造とアレルギー反応の抑制機能について紹介する.

アラジン-1の同定

 造血細胞の分化と活性化を制御している細胞表面分子の働きを解明するため,ヒト骨髄ストローマ細胞株からsignal sequence trap法により,ITIM様モチーフをもち,抑制性の機能をもつことが想定されるアラジン-1を同定した.
 ヒトアラジン-1には,アラジン-1 L,アラジン-1 S1,アラジン-1 S2の3種類のスプライシングバリアントが存在する.アラジン-1 Lは細胞外に2つの免疫グロブリン様ドメインをもち,アラジン-1 S1,アラジン-1 S2はそれぞれアラジン-1 Lの1つ目と2つ目の免疫グロブリン様ドメインをもつ(図1).

マウスアラジン-1とアラジン-1 S1の免疫グロブリン様領域には相同性があり,その相同性は50%であった.ヒトおよびマウスアラジン-1はそれぞれ17番染色体と11番染色体に位置する.

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