<< 一覧に戻る

抗凝固療法 Update

(座談会)虚血性脳卒中と抗凝固療法

棚橋紀夫中川原譲二矢坂正弘野川茂

脳と循環 Vol.16 No.3, 11-18, 2011

虚血性脳卒中急性期の抗凝固療法の現状と問題点
棚橋(司会) 虚血性脳卒中の領域において,抗凝固療法は急性期から慢性期まで広く行われていますが,最近は特に慢性期を中心に新しい抗凝固薬が登場し,また引き続き開発されています.そこで今回は,虚血性脳卒中に対する抗凝固療法の現状と問題点を,急性期と慢性期に分けて討議したいと思います.まず中川原先生に,虚血性脳卒中の急性期における抗凝固療法の現状と問題点についてご説明いただきます.

出席者(発言順、敬称略)
●司会
埼玉医科大学国際医療センター神経内科 教授
棚橋紀夫 Norio TANAHASHI

●出席者
中村記念病院 脳神経外科診療本部長,脳卒中センター長
中川原譲二 Jyoji NAKAGAWARA

国立病院機構 九州医療センター脳血管内科 科長
矢坂正弘 Masahiro YASAKA

東京歯科大学市川総合病院内科・脳卒中センター 教授
野川茂 Shigeru NOGAWA

虚血性脳卒中急性期の抗凝固療法の現状と問題点(続き)

中川原 虚血性脳卒中の急性期における抗凝固療法に関しては,「脳卒中治療ガイドライン2009」に「発症48時間以内の脳梗塞ではヘパリンを使用することを考慮しても良いが,十分な科学的根拠はない(グレードC1)」とあるだけで,再発予防におけるワルファリンの投与開始についても「ワルファリン治療開始の時期に関しては,脳梗塞発症後2週間以内が一つの目安となる.しかし,大梗塞例や血圧コントロール不良例,出血傾向例など,投与開始を遅らせざるを得ない場合もある(グレードC1)」と記載されている程度です.一方,海外においてもいくつかの試験のメタ解析が試みられていますが,抗凝固薬の投与開始も投与期間も試験によりまちまちであり,とてもメタ解析に耐え得るものではありません.

 このように,虚血性脳卒中の急性期に対する明らかなエビデンスが国内外ともに乏しい状況下において,心原性脳塞栓症に対する急性期抗凝固療法の課題としては,まず治療目的を脳梗塞進展の抑制か再発予防かを明確にする必要があります.また,治療開始時期として,発症早期から始めるのか出血性脳梗塞の確認後から始めるのかも重要なポイントになります.さらに,薬剤の選択についても,ヘパリンであれば投与量,投与方法,投与日数をどうするのか,活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT)などの血液凝固能モニターは必要かどうか.あるいはワルファリンであれば,投与開始量はどうするのか,INR の目安は慢性期と同等でいいのかといった課題がほとんど解決されていません.
 一方,「脳卒中データバンク2005」によれば,入院後再発の頻度は5.1%で,その内訳はアテローム血栓性脳梗塞6.9%,心原性脳梗塞6.0%,ラクナ梗塞1.7%でした.また,入院7日以内の再発は59.7%を占め,入院後再発の予知因子としては非ラクナ梗塞,入院後進行,脳梗塞の既往,高血圧症,心房細動などが認められました.

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る