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腫瘍をめぐるQ&A

Question 膵頭部癌に対する術前胆道ドレナージについて教えてください

江口英利永野浩昭種村匡弘丸橋繁小林省吾和田浩志土岐祐一郎森正樹

Surgery Frontier Vol.18 No.1, 97-99, 2011

Answer
はじめに
 膵頭部癌では黄疸を主訴に医療機関を受診することがしばしばあり,術前マネージメントとしての胆道ドレナージは臨床の現場でしばしば施行される手技である。しかし術前胆道ドレナージの臨床的意義や功罪に関しては,エビデンスレベルが高く,日本の実情に合った報告は少なく,必ずしもエビデンスの通りに臨床がなされているとは言い難い。本稿では膵頭部癌に対する術前胆道ドレナージに関する論文を紹介し,臨床上の諸問題を概説する。

術前胆道ドレナージの臨床的意義

 術前胆道ドレナージは,減黄を目的として施行される場合や,胆管炎の治療のために行われる場合,腫瘍の胆管進展の評価のために行われる場合などがある。減黄を目的として胆道ドレナージがなされてきたのは,黄疸を伴った状態で手術を行うと術後合併症が増加するのではないかとの懸念からであるが,本当に術後合併症は増加するのであろうか? この点についてはこれまでにいくつかのランダム化比較試験がなされており,広範囲肝切除を伴わない手術においては術後合併症の発生率には差がなかったとの報告が多い1)-5)。一方で胆管炎を伴う症例の場合は,術前に胆道ドレナージを施行しておくことが推奨されており,一定のコンセンサスを得ているものと思われる。

膵頭部癌に対する術前胆道ドレナージの功罪

 膵頭部癌の術前に胆道ドレナージを行わなくても術後合併症の発生率は変わらないとの報告が多いだけではなく,術前胆道ドレナージ施行例ではその手技自体によって合併症が起こる可能性があることや,減黄のために手術時期が遅れるといった欠点も指摘されている。van der Gaagらは膵頭部癌患者202名に対し,術前に4~6週の胆道ドレナージを施行してから根治切除術を受ける群と,癌の診断後1週間以内に根治術を受ける群を比較するランダム化比較試験を行い,術後合併症率は両群で変わらなかったこと,および胆道ドレナージ群ではドレナージ手技自体の合併症も加わるために総合併症率が高かったことを報告した(図1)6)。

本論文では,近年頻用されるプラスティックステントを第一選択として減黄しており,また複数のhigh volume centerの総計であるためにエビデンスレベルの高い報告と考えられるが,この報告では総ビリルビン値が2.3~14.6 mg/dLの症例を対象としており,比較的軽度の黄疸症例も含まれている点に注意しなければならない。すなわち軽度の黄疸症例と高度の黄疸症例で結果が異なるかどうかについては全く評価不可能であることを認識しておくべきである。さらに本論文で減黄法の第一選択とされたプラスティックステントは,金属ステントと比較して比較的閉塞しやすく,胆管炎を惹起しやすいために,胆道ドレナージ群の合併症率が高かった可能性があるという点にも注意を要する7)。
 一方,胆道ドレナージを行って減黄するには相応の日数を要するため,術前に胆道ドレナージを行うことによって根治手術の時期が遅れ,その遅延が膵癌の長期予後に悪影響を及ぼすのではないかとの懸念も生じる。この点に関して最近Eshuisらは,たとえ胆道ドレナージを施行しても長期予後には影響を及ぼさなかったとの報告をしている8)。

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