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腫瘍をめぐるQ&A

Question 大腸癌肝転移の外科治療方針は変わってきていますか?

関本貢嗣西村潤一竹政伊知朗水島恒和池田正孝山本浩文土岐祐一郎森正樹

Surgery Frontier Vol.18 No.1, 93-96, 2011

Answer
 大腸癌において肝転移は最も頻度の高い再発形式である。大腸癌研究会の全国集計データでは大腸癌の手術患者の10.7%に肝転移があり,手術患者の7.1%が肝臓に再発する1)。2番目に頻度の高い肺転移の頻度はそれぞれ,1.6%,4.8%であり,肝転移と比べはるかに少ない。肝転移の治療成績が大腸癌の治療成績に直結するといってよい。

 肝転移の治療方針として,以前には少数の転移なら切除するが,転移個数が多い場合は切除を諦め,抗癌剤治療を行うべきとされてきた。転移個数が多いと手術侵襲が大きく,切除後の再発が多いことがその理由であった。しかし,その考え方はこの数年で大きく変化した。現在では技術的に切除可能で患者の体力や肝機能が保たれる限り,転移個数に関係なく切除が第一選択の治療法と考えられるようになった。確かに転移個数が多い症例は,少ない症例よりも治療成績が悪い。しかし,そういった症例でも高い治療効果を得られることがあり,切除した方がしないより成績がよいことが分かってきたからである。例えばイギリスの施設から報告された肝転移手術例484例の治療成績では,転移個数が3個以内,7個以内,8個以上の5年生存率は43.3%,38.4%,24%であった。転移個数が増えるほど生存率は低くなるが,現在使用できる最も強力な抗癌剤を用いても再発大腸癌の平均生存期間は約2年であり,切除例の成績が勝ることは明らかである2)3)。

 もちろん切除が不可能な肝転移も多い。こういった症例には,以前は抗癌剤で治療し,その効果がなくなれば治療を断念していた。しかし現在では,切除不能な肝転移は最後まで抗癌剤で治療するのではなく,抗癌剤で切除可能なまでに縮小すれば切除するという考え方になってきた。この10年ほどの間にオキサリプラチンやイリノテカンといった新しい抗癌剤や,分子標的治療薬と呼ばれる抗VEGF抗体や抗EGFR抗体が開発され,大腸癌に対する抗癌剤治療は大きく進歩した。従来の抗癌剤治療の奏効率(腫瘍が半分以下になる確率)はせいぜい20%台であったのが,今では60%以上になった。それに伴い,切除可能になる例も増加し,最近では切除不能肝転移の約3分の1が抗癌剤治療により切除可能となるとする報告もある4)。

 抗癌剤治療が進歩したことで,抗癌剤だけで腫瘍が消失することもしばしば経験するようになった。抗癌剤だけで治癒する症例もあるのではないかとも考えられる。しかしCTやMRIで腫瘍が消失したと診断されても,多くの症例では腫瘍細胞は残っている。CTで完全に消失した肝転移31病変のうち,23例が1年以内に再発したとする報告がある5)。こうしたことから,強力になったとはいえ,抗癌剤単独での治療には限界があり,やはり切除が肝転移治療の基本と考えられている。

 切除不能と診断された肝転移が抗癌剤治療により切除可能となった一例を紹介する。排便困難から前医を受診し,直腸癌と判明した。CTで肝臓全体を占める多発かつ巨大な肝転移を認めた(図1)。

切除不能と判断し,抗癌剤に抗VEGF抗体を組み合わせて投与したところ,約4ヵ月で転移は著明に縮小し,根治切除を行うことができた(図2)。

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