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What's New in SURGERY FRONTIER

第68回癌領域で注目されるPKCの新知見 アポトーシス誘導におけるPKC

吉田清嗣

Surgery Frontier Vol.18 No.1, 62-65, 2011

はじめに
 1972年,英国の病理学者であるKerrらにより,電顕によるいくつかの微細構造の特徴から,ネクローシスとは異なる細胞死としてアポトーシス(apoptosis)が命名された1)。アポトーシスはギリシヤ語に語源を有し,apoはoff,ptosisはfall,すなわち英語でfalling offに置き換えられる語である。

はじめに(続き)

ちょうど,樹木から落葉する現象を表現したものであり,落葉した木の葉は病気により死んだのではなく,翌春の新芽のためのエネルギーを蓄えるために自ら命を絶つといった意味が込められている。アポトーシスの経過は,まず細胞が縮み,核が凝縮し,細胞表面の微絨毛は消え,やがて核が断片化し,続いて細胞も断片化してアポトーシス小体と呼ばれる大小の小胞になる。アポトーシス小体は速やかにマクロファージや近隣の細胞に取り込まれて除去される。アポトーシスは偶発により生じた細胞死ではなく,遺伝子レベルで調節された細胞死であるため,分子生物学の進歩とその成果により,近年そのメカニズムが急速に解明されてきている(図1)。

アポトーシス誘導とPKCδ

 これまでの研究から多くのPKC (protein kinase C)が増殖を促進する信号伝達に関与することが示唆されてきたのに対し,PKCδだけは細胞の増殖を停止させたり,細胞の分化や細胞死を誘導することが明らかにされており,PKCの中で特異的な機能を有すると考えられている2)3)。PKCδはDNA損傷などのストレス刺激に応じてアポトーシス実行因子の1つであるカスパーゼ3により限定分解され,遊離したキナーゼドメイン(PKCδCF)の活性が高まり,アポトーシスを強く惹起する4)。その機構としてPKCδCFは細胞核に移行し,さまざまな基質をリン酸化し,活性化することが示唆されている(表1) 5)6)。

1 PKCδによるp53制御機構

 DNA損傷によるアポトーシス誘導に最も重要な機能を果たしている分子として,癌抑制遺伝子産物であるp53が知られている7)。p53はリン酸化をはじめとする多彩な翻訳後修飾を受け,さまざまな機能を発揮している。われわれは,p53のアポトーシス誘導に必須とされるSer46のリン酸化にPKCδが関与していることを明らかにした(図2)8)。

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