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脳におけるエストロゲンの見えざる作用

第29回 オキシトシンと父性

武谷雄二

HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.28 No.2, 83-87, 2021

ホルモンとしてのオキシトシンの代表的な作用は,子宮を収縮させ胎児の娩出を促し,児が誕生すると乳汁分泌を起こすことである。一方,オキシトシンは神経ペプチドとして,われわれの情動,精神の安定性,コミュニケーション,行動などにも関わっている。たとえばカップルが成立して,信頼関係を構築してお互いに寛大な心を抱くためにはオキシトシンが必要である。このことがオキシトシンは「愛情ホルモン(love hormone)」ともいわれているゆえんである。オキシトシンには共感力を高め,相手をいたわるような気持ちにさせ,利他的な行動に走らせる作用がある。特に母親の子への愛着にはオキシトシンが重要な役割を果たしていることは広く知られている。そのためオキシトシンは「抱擁ホルモン(cuddle hormone)」とも呼ばれている。
最近,多くの哺乳類のオス/男性の子育てにもオキシトシンが深く関わっているという事実が注目されている1)。本稿ではオキシトシンが父親の脳をどのように変えているかについて解説する。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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