特集 漢方医学の妙諦を探る
漢方医学が得意とする婦人科症状:その発症メカニズムと治療効果
(3)耳鳴り
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.26 No.4, 57-60, 2019
耳鳴は,厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査」において人口1,000人あたり男性26.3人,女性31.8人がきたしており,60歳以上では男性が多く,10〜59歳までは女性が多い。女性が男性より多く,難聴・耳鳴をきたす疾患もあるが,女性ホルモンがどのように関与しているかは不明である。
聴覚路の障害のために音の入力が不足することにより,中枢で音に対する感度が増大した状態が耳鳴と考えられる。不安,怒り,うつなどの精神的要素や,血圧変動,過労などの身体的要素が耳鳴を修飾する。漢方医学的には,脳へ気血が適切に届かなくなったときに耳鳴が生じると考えられ,気血水いずれの異常でも起きうる。
音の入力不足を改善する目的で,補聴器を装着することなどにより耳鳴の消失が期待できる。薬物療法が行われることが多いがエビデンスは低い。低音障害型難聴は利水剤が投与されることが多い。耳管開放症は体重減少,妊娠,避妊ピルなどが原因となり,補中益気湯や加味帰脾湯が投与されることが多い。耳鳴を修飾する要素の改善を目的として投与されることが多く,精神的要素が影響する耳鳴,加齢変化,更年期障害に伴う耳鳴などに投与されるが,個々の体質にあった漢方薬を選択する。
「KEY WORDS」耳鳴,女性,漢方薬,耳管開放症
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。