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性ステロイドホルモン製剤の使い分け

性ステロイドホルモンの臨床応用 (3)性同一性障害と性ステロイド

石原理高橋幸子梶原健岡垣竜吾高井泰

HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.18 No.2, 45-50, 2011

Summary
 性同一性障害に投与される性ステロイドホルモンは,大量で長期間に及ぶため慎重なモニタリングが不可欠であり,血中濃度の測定可能なホルモンを選択することが望ましい。身体的性別が男性のMTFでは,経皮・経口エストラジオール製剤を選択することで,血栓塞栓症など重篤な合併症を軽減できる可能性がある。また,身体的性別が女性のFTMについては,経皮・経口テストステロン製剤の新規国内投入が望まれる。

Key words
●性同一性障害(GID) ●FTM ●MTF ●ホルモン療法 ●血栓塞栓症

はじめに

 性同一性障害(gender identity disorder;GID)に対して性ステロイドホルモン製剤を投与する目的は,もともとの身体的性別に特有の二次性徴を抑制し,求める新しい性別に特有の二次性徴を促進することである。すなわち,生来の身体的性別が女性の場合(female to male;FTM)は男性ホルモンを,男性の場合(male to female;MTF)は女性ホルモンを,主に投与することになる。
 本稿では,GIDにおける性ステロイドホルモンを中心とするホルモン療法の現状を述べるとともに,副作用などその問題点について整理する。なお,GIDの診断や病態などについては,本誌をはじめ筆者らが各誌にこれまでに発表した総説をご参照いただきたい1)-5)。

GIDに対する性ステロイドホルモン製剤投与のガイドライン

 GIDの診断は,日本精神神経学会による『性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第3版)』とともに,ICD-10と米国精神医学会のDSM-IV-TRが,常に参照されている(なお現在,『性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第4版)』,ICD-11,DSM-Vがそれぞれ検討されている)。一方,GIDの治療は主に,2001年に改定されたHarry Benjamin International Gender Dysphoria Association(現在のWorld Professional Association for Transgender Health;WPATH)による『Standards of Care for Gender Identity Disorder(SOC)6th version』 6)が,これまで参照されてきた。SOCは,現在に至るまでホルモン療法の適応や時期,留意する事項などについて,価値のあるガイドラインであり続けてきた(SOCも改訂作業中である)。これらに加えて,GIDに対するホルモン療法の経験が世界各国で近年蓄積されつつあり,エビデンスレベルの高い報告こそないものの,ホルモン療法に関する客観的研究報告が少しずつ集積されてきた。
 そこで2009年に各国の専門家の協議によって,これまで報告された800本以上の論文などの検討に基づき,GIDに対するホルモン療法におけるEndocrine Societyのガイドライン 7)が作成され,公刊された。

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