特集 ジェンダーと血栓症
Ⅱ.疫学 1.血栓イベントリスクの男女差―グローバルな考察
血栓と循環 Vol.23 No.4, 11-14, 2015
「論文のポイント」
[1]性差医学は1980年代より心血管疾患分野を中心に発展してきた.
[2]女性は男性と比較して動脈硬化の進展が約10年遅い.この原因の1つとして,女性ホルモンの関与が考えられ,閉経後の女性へのホルモン補充療法(HRT)が有望視されていた.しかし,大規模臨床試験の結果,ホルモン補充療法は心血管リスクを低下させなかった.
[3]スタチンの性差問題は比較的歴史が短い.今年初めにCTT meta-analysisが発表され,スタチンは男女ともに同等のefficacyがあることが証明された.一方で,safetyに関しては,いまだに十分なデータはなく,今後の研究が期待される.
[4]血栓イベントにおける男女差は確実に存在するが,機序や原因が明らかになっているのはごく一部である.今後,遺伝子研究を含めた基礎研究における成果が大いに期待される.
「キーワード」性差医学/エストロゲン/コレステロール/スタチン
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