特集 ダイナミックに変わりつつあるDICの診断・治療
Ⅱ.DICの診断/ガイダンス 2.敗血症性DICの新たな診断基準
血栓と循環 Vol.23 No.2, 30-35, 2015
「論文のポイント」
[1]これまで,DIC診断には旧厚生省DIC診断基準(以下,旧厚生省基準)が最も汎用されていた.しかし,救急・集中治療施設で管理することの多い重症患者の早期DIC診断時にこの基準を用いることは適しておらず,加えてDICに対する治療介入が遅れ,治療に介入しても,もはや治療に反応しないと言うことが以前より指摘されていた1).
[2]一方,近年,炎症反応と凝固反応はお互い密接に関係した同時進行性の病態であることが認識され,日本救急医学会はDIC診断の遅れを回避し,炎症と凝固の密接な関係を考慮した上で,SIRS関連凝固異常(SIRS-associated coagulopathy:SAC)という新たな概念を提唱するとともに,急性期DIC診断基準(以下,急性期基準)を公表した2).急性期基準は診断項目にSIRS陽性項目数を採用しており,凝固・線溶異常に加えて,炎症病態を加味した点で新しいDIC診断基準と評価できる.しかし,急性期基準は感度こそ高いものの,特異度は低い事が以前より指摘されていた.
[3]この問題を解決すべく,また今やICU全入院患者の約15%を占めるに至った『敗血症』に特化したDIC基準の作成を目的に,われわれはSepsis-induced DIC(SEDIC)criteriaを作成した.
[4]本稿ではSACの概念とSEDIC criteriaの作成経緯について概略を述べる.なお,本稿ではSepsisと敗血症を同義語として扱うことを了承していただきたい.
「キーワード」DIC/敗血症/プレセプシン/プロテインC/診断基準
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。