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データブック アテローム血栓症の大規模臨床試験 PART3

8.薬物療法・副作用など d.遺伝子多型 2.若年発症の患者1,880人における凝固因子第Ⅴの遺伝子多型Leidenと急性心筋梗塞の関係

泉学苅尾七臣

血栓と循環 Vol.19 No.3, 304-306, 2011

出 典
Mannucci PM, et al:
The association of factor Ⅴ Leiden with myocardial infarction is replicated in 1880 patients with premature disease.
J Thromb Haemost 8(10):2116-2121, 2010

※図表に関しましては、割愛させていただいております。

要 約

背景

 近年,血栓により冠動脈が閉塞するということは,遺伝子のレベルまで研究が行われてきた.しかしながら,どの遺伝子多型が凝固機能に影響を及ぼすのか,あるいは冠動脈疾患に影響するのか?これまでに発表されている研究の多くは,十分な答えを出せていない.そこでYeらは,冠動脈疾患における血栓因子を,メタ解析を用いて解析を行った.その結果,2つの異型が急性心筋梗塞と冠動脈狭窄に対するリスクを中程度に上昇させることがわかった.その2つとは,凝固因子第5(Factor Ⅴ:FⅤ)の異型,Leiden(G1691A 相対リスク1.17)とプロトロンビン(Factor Ⅱ:FⅡ)の異型(G20210A 相対リスク1.31)であった.
 両者ともに,過凝固のマーカーであり,異型の凝固因子はトロンビン形成を高め,静脈血栓症のリスク因子として確立されている(相対リスクとして,3.0-7.0である).プラスミノーゲンアクチベーター(PAI-1, 血漿の線維素溶解を主に阻害する)をエンコードする遺伝子の多型(-675)4Gは,急性心筋梗塞のリスクを小さいながらも統計的に有意に(相対リスク1.04)増加させた.この背景により,この3つの遺伝子多型を45歳未満の若年発症した急性心筋梗塞を対象としたこの大規模なイタリア人のケースコントロールスタディで,われわれは再検した.

対象と方法

 Atherosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology Study Group (ATVB)は,125のイタリアのCCUを含むネットワークである.1,880人のカフカス人の若年発症の急性心筋梗塞患者(初発の年齢が45歳未満)と同数のコントロールを登録した.それぞれのSNPにおいて,対立遺伝子と遺伝子型の頻度のデータは,χ二乗検定により解析された.さらに,それぞれの対立遺伝子についての漸近的なp値,オッズ比(ORs)および95%信頼区間(CI)を解析し,多変量ロジスティック解析における共変数としては,古典的な心血管リスク因子で補正を行った.すべての症例において,統計学的な有意は5%と設定した.

結果

 症例は,1,670人の男性と210人の女性で,平均年齢は39.6±4.9歳であった.古典的リスク因子として,高コレステロール血症(症例群vsコントロール群,61.5% vs 45.5%),糖尿病(61.5% vs 45.5%)および高血圧症(27.6% vs 9.1%)が含まれた.FⅤとFⅡおよびPAI-1のSNPs,それぞれの遺伝子決定の成功率は95%,正確性は99%以上であった.表1は,対立遺伝子の関連を研究全体において,それぞれ3つの多型について解析した結果である.
 FⅤ Leidenの遺伝子多型のみが若年発症の急性心筋梗塞に(OR 1.61, 95%CI 1.16-2.22)関連があった.そして,この結果は共変数を用いて補正した後も統計学的な有意性を示した(OR 1.66, 95%CI 1.15-2.38).FⅡ G20210Aの遺伝子多型に関しては, 補正を行わない解析において統計学的な傾向は認められた(OR 1.32, 95%CI 0.96-1.80)が,関連性の強さとしては,共変数による補正の後はわずかながら減少を認めた(OR 1.28,95%CI 0.91-1.79).PAI-1の遺伝子多型と急性心筋梗塞の間には,有意な関連は認められなかった.
 急性心筋梗塞とFⅤ Leidenとの関連を,データを性別に層化して解析を行うと,男性ではさらに関連は強くなった(OR 1.96, 95%CI 1.33-2.88,p=0.001).しかし,女性においては,(OR 0.38, 95%CI 0.09-1.63, p=0.193)と関連は消失した.喫煙と高コレステロール血症を用いて可能な相互作用の解析を行ったところ,不均一の傾向 (p=0.082)は,FⅤ Leidenについて群間でコレステロール血症の有無(喫煙によってではなく)で層別化した際に認められた.つまり,高コレステロール血症の有無は,FⅤ Leidenの急性心筋梗塞に関わるリスクに影響した.GA+AAの遺伝子多型が高コレステロール血症の表現形に加わると急性心筋梗塞のリスクが3.71 倍(95%CI 2.27-6.07)に上昇した.

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