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データブック アテローム血栓症の大規模臨床試験 PART3

2.心臓 c.うっ血性心不全 SCD-HeFT 1.心不全症例における血栓塞栓症のリスク―SCD-HeFT試験からの解析

大塚崇之山下武志

血栓と循環 Vol.19 No.3, 91-93, 2011

出 典
Freudenberger RS, SCD-HeFT Investigators:
Risk of thromboembolism in heart failure:an analysis from the Sudden Cardiac Death in Heart Failure Trial (SCD-HeFT).
Circulation 115(20):2637-2641, 2007

※図表に関しましては、割愛させていただいております。

要 約

背景

 心不全患者における脳卒中と血栓塞栓症の発症は臨床上重要な問題であり,心不全症例における脳卒中の発症率は1.3~3.5%とされている.しかしながら,心房細動の既往のない心不全患者における血栓塞栓症の発症率やその危険因子に関する情報は不十分である.本研究ではSCD-HeFT試験コホートをもとに,中等度以上の自覚症状を有する心房細動および心房粗動の既往のない低左心機能症例における,血栓塞栓症の発症率とその危険因子に関して検討した.

方法

 対象はSCD-HeFT試験に登録された2,521例であり,NYHA分類のⅡ~Ⅲ度の自覚症状を有する左室駆出率(LVEF)35%以下の心不全患者が,植え込み型除細動器(ICD)群,アミオダロン群,プラセボ群にランダムに割り付けされた.試験の1次エンドポイントは総死亡とした.アミオダロン群では最初の1週間を800mg/日,続く3週間を400mg/日の内服とし,その後は150mg-200mg/日の維持量を投与した.ICD群では,ICD治療は右室のみのシングルリードデバイスを用いて,188bpm以上の頻拍に対しショックのみを行う設定とした.
 患者はランダム化の後,1週間後,1ヵ月後,3ヵ月後,その後は3ヵ月ごとに診察を受けた.心房細動および心房粗動の既往を有する症例を除き,経過中の脳卒中,末梢血管および肺血栓塞栓症は血栓塞栓症イベントとしたが,一過性脳虚血発作は本解析から除外された.

結果

 2,521例のランダム化された症例のうち,心房細動および心房粗動の既往を有さない2,114例について解析が施行された.平均45.4ヵ月の観察期間中に71例(3.4%)において血栓塞栓症が発症した.3種類の治療法が割り付けされたそれぞれの群における血栓塞栓症の発生率は,アミオダロン群で2.1%,ICD群で3.2%,プラセボ群で5%であり,年間発生率はそれぞれ0.7%,0.8%,1.5%であった.多変量解析において,割り付けられた治療法は血栓塞栓症の独立した危険因子であり,プラセボ群と比較してICD群およびアミオダロン群における血栓塞栓症の発症リスクは約半分であった[ICD群vsプラセボ群:HR, 0.57(95% CI, 0.33-0.99),アミオダロン群vsプラセボ群:HR, 0.44(95% CI, 0.24-0.80)](図1).それに加え割り付け時の高血圧症[p=0.021;HR, 1.86(95% CI, 1.10-3.13)]と5%のLVEF上昇[p=0.023;HR, 0.82(95% CI, 0.69-0.97)]は有意な予測因子であった.LVEFにより30-35%,20-30%,20%未満に分類すると,4年間のKaplan-Meierによる血栓塞栓症の発生率は3.5%,3.6%,4.6%であり,年間発生率はそれぞれ0.9%,0.9%,1.2%であった(図2).
 登録時に28%の症例でワルファリン,59%でアスピリンを内服していたが,ワルファリンの内服による血栓塞栓症のリスク回避は有意ではなかった(p=0.22;HR, 0.62[95% CI 0.29-1.33]).
 また,登録後の新規心房細動の発症は9%で認められ,アミオダロン群で少ない傾向であり(アミオダロン群:5%,ICD群:12%,プラセボ群9%),AFの新規発症は血栓塞栓症発症の有意な危険因子であった(p=0.008;HR, 3.00[95% CI 1.33-6.75]).

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