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データブック アテローム血栓症の大規模臨床試験 PART3

2.心臓 b.血栓溶解療法 PLATO 7.侵襲的治療を予定する急性冠症候群症例におけるticagrelorとclopidogrelの比較:PLATO試験の解析結果より

坂田泰彦南都伸介

血栓と循環 Vol.19 No.3, 85-87, 2011

出 典
Cannon CP, et al. the PLATelet inhibition and patient Outcomes(PLATO)investigators:
Comparison of ticagrelor with clopidogrel in patients with a planned invasive strategy for acute coronary syndromes(PLATO):a randomised double-blind study.
Lancet 375(9711):283-293, 2010, Epub 2010 Jan 13

※図表に関しましては、割愛させていただいております。

要 約

背景

 現在,ST上昇の有無にかかわらず急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome:ACS)症例においては,血栓症を含めた心血管事故予防目的にアスピリンとクロピドグレルの併用投与が推奨されている[注:日本におけるクロピドグレルの保険適応は経皮的冠動脈インターベンション(Percutaneous Coronary Intervention:PCI)を予定する非ST上昇型ACSのみ].しかしながらチエノピリジン系薬剤であるクロピドグレルは肝臓での代謝で活性化されるプロドラッグであるため,その効果や発現速度,出血リスクに個人差がある.
 一方,クロピドグレルと同様に血小板のP2Y12受容体に拮抗して抗血小板作用を発揮するticagrelorは,体内での代謝を介さない直接的な拮抗薬であり,その作用はクロピドグレルと比較して安定しているとされ,その臨床的有用性が期待されている.事実,発症後24時間以内に入院したACS症例18,624例を対象として心血管事故抑制効果を比較検討したPLATO(PLATelet inhibition and patient Outcomes)試験では,ticagrelorはクロピドグレルに比べ,大出血リスクを上昇させることなく,血管死,心筋梗塞,脳卒中の複合エンドポイントを有意に抑制した.しかしながら同試験では幅広い層のACS症例を対象としていたため,早期侵襲的治療が予定されるACS例においても同様の結果が得られるか否かは検討の余地が指摘されていた.
 そこで今回,PLATO試験のサブ解析として,同試験参加者において侵襲的治療が治療プランとして選択された13,408例において解析がなされたため,その結果を本稿で紹介する.

対象

 PLATO試験の登録基準の概略は,非ST上昇型ACSに関しては以下の3つの基準,すなわち①心電図における虚血性ST変化,②心筋壊死を示すバイオマーカーの陽性,③1つ以上のリスク因子[60歳以上;心筋梗塞既往またはCABG施行;少なくとも2つの血管に50%以上の狭窄を認める冠動脈疾患;虚血性脳梗塞/病院で診断された一過性脳虚血発作の既往;50%以上の頸動脈狭窄または脳血管血行再建術;糖尿病;末梢動脈障害:慢性腎機能障害(クレアチニン・クリアランス<60mL/分/1.73m2)],のうち2つ以上を有することであり,ST上昇型ACSの場合は2つ以上の誘導で0.1mV以上の持続性ST上昇または新規の左脚ブロックを有し,プライマリPCI施行予定であることである.除外基準はクロピドグレル投与の禁忌,24時間以内の血栓溶解療法実施,経口抗凝固薬投与が必要,などである.結果として43ヵ国862施設が参加し,2006年10月~2008年7月にACSで発症後24時間以内に入院した18,758例が登録され,そのうち18,624例が,ticagrelor群(9,333例)とクロピドグレル群(9,291例)に無作為二重盲検・二重ダミー法により割り付けられた.本解析ではそのうち侵襲的治療が予定された13,408例を対象としている(ticagrelor群6,732例,クロピドグレル群6,676例).両群の患者背景は以下の通り.
1.患者背景
 年齢中央値(ticagrelor群61.0歳,クロピドグレル群61.0歳),女性(25.2%,25.3%),白人/黒人/アジア人/その他(91.2%/1.3%/6.1%/1.4%,90.7%/1.5%/6.4%/1.4%),心筋梗塞既往(17.1%,16.9%),PCI既往(14.1%,13.3%),CABG既往(5.3%,5.7%),糖尿病既往(22.7%,23.7%),最終診断:ST上昇型心筋梗塞(48.8%,49.5%),非ST上昇型心筋梗塞(38.2%,37.2%),不安定狭心症/その他(13.0%,13.3%).

方法

 両群におけるエンドポイントおよび出血性合併症の発生頻度をintention-to-treat法により解析した.追跡期間は1年.1次エンドポイントは血管死,MI,脳卒中の複合エンドポイントであり,2次エンドポイントは全死亡,MI,脳卒中の複合,さまざまな脳心血管系・血栓性の死亡,1次エンドポイントの単独項目,全死亡,ステント血栓症であった.安全性の1次エンドポイントは大出血とした.投与法はticagrelor群ではticagrelor 180mgで初回投与後に90mg×2回/日にて継続投与(同時にクロピドグレルのプラセボも投与)を行い,クロピドグレル群ではクロピドグレル 300mgで初期投与(ランダム化前に5日間以上チエノピリジン系薬剤を服用していた場合は省略)を行った後,75mg/日を継続投与とした.

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