特集 睡眠時無呼吸症候群:基礎から臨床
基礎医学とのダイアローグ
1.ナルコレプシーの病因研究
THE LUNG perspectives Vol.28 No.1, 57-60, 2020
ナルコレプシーは夜間睡眠の量や質とは関連せず過剰な眠気を生じる中枢性過眠症の代表である.中核症状は日中の居眠り反復と特異な情動脱力発作である.入眠時レム睡眠期出現,HLA-DQB1*06:02遺伝子型,脳脊髄液中のオレキシン濃度異常低値という生物学的指標があり,オレキシン低値による視床下部の睡眠覚醒切換の異常によりその不思議な病態を説明することが可能である.現在の最大の謎は,ナルコレプシーでなぜオレキシン産生細胞の選択的な消失が生じるかという理由である.HLAとの密接な関連から「自己免疫機序に基づくオレキシン細胞障害」仮説が信じられており,実際にナルコレプシーの病因として遺伝因子と環境因子が関わることが示されている.ナルコレプシーの病態理解進展により,多彩な随伴症状を含めた全容解明が進むことを期待する.
「KEY WORDS」情動脱力発作,入眠時レム睡眠期(SOREMP),視床下部の睡眠覚醒スイッチモデル,オレキシン,自己免疫仮説
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