第一線で働く医師たちからのオピニオン
「住み慣れた土地で安心して最期まで暮らせるように」
THE LUNG perspectives Vol.27 No.4, 76-79, 2019
父,祖父をはじめ親族に医師が多く,親戚の集まりでは自然と医療の話題が中心になるような環境で育ちました.それでも「医者になれ」と言われたことはありませんでしたが,お酒が進むといつも研究に情熱を傾けた頃の話を楽しそうにする父の姿が印象に残っていました.また,小さい頃には,4歳年の離れた弟が喘息発作をたびたび起こしており,その苦しむ姿と治療にあたる父の姿を目の当たりにし,子どもながらに「自分も役に立ちたい」という思いをもったことが,医師の道に進むきっかけになったように思います.
2000年に東海大学医学部を卒業し,2003年に信州大学医学部内科学第一教室呼吸器・感染症・アレルギー内科に入局しました.当時,教授であった久保惠嗣先生(現 地方独立行政法人長野県立病院機構 理事長)は,先進的な研究とともに実臨床を大切にされており,患者さんの顔を見てしっかりお話を聞く,頭から足先まで全身をみるという診療の基本姿勢を学びました.
学位論文では,小児喘息が寛解した若年成人の気道炎症と気道過敏性について調査しました.その結果,小児喘息の既往をもつ若年成人の約半数に気道過敏性の亢進,好酸球性の気道炎症,軽度の気流閉塞がみられたのです1).これは,小児喘息寛解後も気道のアレルギー性炎症や過敏性が残存し,喘息再発の可能性があることを示唆しています1).実際の外来でも,風邪を繰り返している,咳が長引いているといった訴えで受診する患者さんのなかに,小児喘息の既往がある症例を経験します.幼い頃に喘息があったことを忘れている方もありますので,こうした「かくれ喘息」を見逃さないためにも丁寧な問診を心がけています.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。