特集 肺移植─呼吸器医が知っておきたい我が国の現状─
基礎医学とのダイアローグ
2.移植片対宿主病に対する間葉系幹細胞治療
THE LUNG perspectives Vol.27 No.4, 53-58, 2019
間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)は,間葉系に属する体性幹細胞で,骨髄の間質細胞として,造血細胞の増殖や分化を支持する骨髄微小環境を構成しているのみならず,骨芽細胞や脂肪細胞,筋細胞,軟骨細胞などの間葉系細胞への分化能を有する.その上,免疫抑制作用や,炎症部位や損傷組織に集積しやすい性質を有し,組織修復・再生能を示す.さらに,MHCクラスIIやCD86などの共刺激分子を発現していないため免疫原性が低く,造腫瘍性も持たないため,近年,細胞治療法として再生医療への応用に有望な候補細胞として注目を集めている.それ故,MSCを用いた臨床研究が国内外で多数行われ,その安全性と高い治療効果が認められつつあり,2015年9月には,国内初の他家由来の再生医療等製品として,JCRファーマ株式会社の「ヒト(同種)骨髄由来間葉系乾細胞(テムセル®HS注)」が,造血幹細胞移植後のステロイド抵抗性の急性移植片対宿主病(急性GVHD)を適応症として,厚生労働省よりその製造販売が承認された.本稿では,この間葉系幹細胞とその治療対象としてGVHDへの有効性について概説する.
「KEY WORDS」間葉系幹細胞,移植片対宿主病,プレコンディショニング
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。