CPC日常臨床から学ぶ
特発性肺線維症を基礎疾患として急激な呼吸状態の悪化をきたした1例
IPF patient with acute respiratory failure
THE LUNG perspectives Vol.24 No.1, 4-9, 2016
「はじめに」特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)は,慢性進行性に呼吸不全をきたす疾患である1)。詳細な病態機序は不明であるが,現在のところ,何らかの刺激により肺胞上皮傷害が生じ,繰り返す刺激と不適切な修復のために線維芽細胞が過剰に活性化し,肺の線維化が引き起こされると考えられている。症状出現時から3~4年で死に至る予後不良な疾患である。近年,ピルフェニドンなどの抗線維化に着目した治療の有効性が報告されているが,根本的な治療法がないのが現状である。本疾患は,ときに急激な呼吸不全の進行をきたし,急性増悪を起こすことが知られている2)。今回,IPFの経過中に急激な呼吸状態の悪化をきたした剖検症例を経験したので報告する。
「1.症例」
症例:41歳,男性
主訴:呼吸苦,血痰
既往歴:特記事項なし
家族歴:母:悪性リンパ腫,父:胃癌,血縁者に間質性肺炎なし
生活歴:喫煙:なし,飲酒:機会飲酒,ペット飼育:猫,家屋:アパート
職業歴:自営業(事務),粉塵曝露歴なし
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。