<< 一覧に戻る

学会賞 受賞演題・論文解説 第29回 日本排尿機能学会

論文部門:臨床 Decreased renal function increases the nighttime urine volume rate by carryover of salt excretion to the nighttime

竹澤健太郎

排尿障害プラクティス Vol.30 No.2, 76-79, 2023

近年,夜間頻尿は生命予後を悪化させることがわかってきました1)。夜間頻尿の原因の50~80%は夜間多尿ですので,夜間頻尿患者さんの生命予後改善に夜間多尿の治療成績向上が不可欠です。しかし,夜間多尿は病態がいまだよくわかっておらず治療の難しい疾患です。私たちは夜間多尿の病態を少しでも明らかにしたいと考えました。
今回,私たちは腎機能障害の夜間多尿に及ぼす影響に着目しました。以前から慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)患者さんの夜間頻尿有病率が高いことから,CKDは夜間頻尿のリスク因子の1つと考えられてきました。また,その原因は腎機能が低下すると尿濃縮力が低下し夜間多尿になるからだと考えられてきました。確かに,Fukudaらの行ったCKD患者27例を対象として昼間と夜間の尿量を調べた報告では,CKDのグレードが高い症例ほど夜間尿量が多いことが示されています。しかしその報告をよくみると,CKDのグレードが高い症例では昼間尿量が少ないことも示されています2)。つまり,CKD患者さんでは夜間尿量が増加するだけでなく昼間尿量が減少する可能性が示唆されます。この現象は尿濃縮力の低下では説明することができません。私たちは腎機能障害に伴う夜間多尿には尿濃縮力低下とは異なる病態が存在すると考え,その病態を明らかにしたいと考えました。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る