特集 腸内細菌と循環器疾患
基礎 腸内細菌代謝産物と生体機能 ~循環器・代謝疾患の治療への応用
CARDIAC PRACTICE Vol.29 No.4, 23-27, 2019
ヒトの腸管内腔には約1,000種類,総数10¹⁴個にも及ぶ細菌で構成される腸内細菌叢が存在し,これら腸内細菌は難消化性多糖の分解および代謝,ビタミンなどの必須栄養素の産生,免疫系への刺激など,さまざまな生理活性を有していることが知られている。近年,メタゲノミクス,プロテオミクスやメタボロミクスなどの解析技術の発達により,腸内細菌叢のバランスの乱れが,腸管関連疾患だけでなく全身疾患につながることが明らかになってきた(表1)1)。しかしながら,腸内細菌の多くが難培養性であるため,菌種の同定ならびに機能特性についてはいまだ不明な点が多い。そのような中,腸内細菌と疾患感受性との関連を示す分子実体として,腸内細菌が作り出す代謝産物が注目されている。本稿では,腸内細菌叢および腸内細菌代謝産物と循環器・代謝疾患との関連について,現在までの知見とともに,今後の治療への展望について概説する。
「KEY WORDS」腸内細菌叢,短鎖脂肪酸,GPCRs,肥満,2型糖尿病
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。