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日本微量元素学会学術集会

第22回日本微量元素学会学術集会

佐治英郎

栄養-評価と治療 Vol.28 No.4, 66-67, 2011

 第22回日本微量元素学会学術集会を2011年7月1日~2日の2日間,京都市の京都テルサにて開催させていただきました。

 日本微量元素学会は微量元素,微量金属,栄養に関する4つの学術集会が核となって発足し,現在では,微量元素をキーワードに,保健・医療・製薬・化学・食品・環境・分析などの各分野が融合する学際的な学会として発展し,わが国における微量元素研究の唯一かつ中枢的学会となっています。特に近年,微量元素の生体機能における重要性が強く認識されるようになり,微量元素の摂取基準の上限あるいは下限など,保健衛生・栄養・医療などの領域での行政対応などに対して本学会は一定の役割を果たしてきており,また今後も貢献が期待されているところであります。このような背景のもと,本学会が今後さらに発展していくためには,この学会を構成している基礎分野と臨床分野の連携の強化とともに,近年目覚ましい発展を遂げている分子生物学,臨床オミックス学,新しい手法を用いる生体分析学などの新しい学問領域の進歩を取り入れ,活用していくことが有効であると考え,今回の学術集会のテーマを「微量元素研究の新たな展開を求めて」とし,本学術集会が今後の微量元素およびその関連分野の研究,教育の新しい方向性や目標を探っていくための機会となることができればと考えました。
 今回の学術集会では2つの特別講演を企画しました。1つは,順天堂大学医学部衛生学講座客員教授/財団法人労働科学研究所の千葉百子先生に「マグネシウムと健康─栄養から医薬品応用まで─」と題して,最近注目されている必須元素,マグネシウム(Mg)の健康に及ぼす影響,特にMg欠乏と心機能の低下との関連について,タイでのフィールドワークの結果に基づいてお話しいただきました(図1)。

もう1つは,理化学研究所放射光科学総合研究センターの城 宜嗣先生に「鉄タンパク質による生体内情報・物質・エネルギー変換」と題して,SPring-8理研ビームラインを用いたX線構造解析手法と分子分光法ならびに分子生物学・細胞生物学的手法も駆使し,それより得られた構造情報をもとに,特に鉄結合タンパク質である酸素センサータンパク質,酸素添加酵素,一酸化窒素還元酵素について,その立体構造と酸素,一酸化窒素の生成,消去(代謝)との関係に関する構造生物学研究についてのご講演をいただきました(図2)。

いずれもきわめて興味のあるご講演で,今後の微量元素の研究に有益な示唆を与えていただけたものと思いました。
 また,シンポジウムは3つ開催しました。1つは,本学会の委員会活動の状況を広く参加者に知っていただくために,今回初めて本学会内の委員会の1つである栄養ならびに毒性評価委員会にシンポジウムを企画していただくことを試み,本委員会の委員である関西大学化学生命工学部生命・生物工学科食品工学研究室教授吉田宗弘先生にお世話をいただき,ミニシンポジウム「微量元素の適切な摂取範囲をもとめて」を開催しました。このシンポジウムは,吉田先生のご講演と一般からの3演題とで構成しています。また,他のシンポジウムとしては,京都大学大学院生命科学研究科統合生命科学専攻応用生物機構学講座生体情報応答学准教授 神戸大朋先生と理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター 深田俊幸先生に「亜鉛生物学の基礎医学と臨床医学における新展開」,および,静岡県立大学大学院薬学研究科医薬生命化学教室准教授 武田厚司先生と九州保健福祉大学薬学部教授 川原正博先生に「脳神経系における金属の機能と毒性:ニューロメタル最前線」をそれぞれ企画していただきました。両シンポジウムが対象とした領域はいずれも最近研究が活発に行われ,進展の著しい領域であり,シンポジウムでは基礎的な切り口から微量元素の生理機能解明のための論理的な展開を含めた優れた講演が各シンポジストにより行われ,立ち見が出るほどの参加者があり,若手の研究者を中心に熱気あふれた活発な議論がなされました(図3)。

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