症例検討 脂質代謝異常症への多角的アプローチ
第130回 家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)に対してロミタピドを使用した1例
The Lipid Vol.30 No.3, 90-95, 2019
家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia;FH)とは,LDL受容体あるいはPCSK9などその関連蛋白の欠損による常染色体優性遺伝性疾患で,臨床的診断基準は①高LDL-C血症,②早発性冠動脈疾患,③腱・皮膚黄色腫を3主徴とする.頻度はFHヘテロ接合体(heterozygous FH;HeFH)で200~500人に1人,FHホモ接合体(homozygous FH;HoFH)で16万~30万人に1人とされる1).冠動脈疾患リスクが非常に高く,HeFHは男性55歳未満(女性60歳未満)で冠動脈疾患を発症するとされ,HoFHは小児期に心血管イベントを発症するとされており,早期診断と厳格な脂質管理を要する.管理目標値は一次予防でLDL-C 100mg/dL未満,二次予防で70mg/dL未満とされる2)が,スタチン,エゼチミブ,PCSK9阻害薬などの残存LDL受容体機能に依存する従来療法では多くの症例,特にHoFHにおいて,管理目標値の達成は困難であった.LDLアフェレーシス療法(LDL apheresis;LDL-A)はそうした点において,LDL受容体機能と関係なく,LDL-Cを低下させる点で非常に有用ではあるが,侵襲的であり,実施可能施設が限られている点が問題であった.
ロミタピド(商品名:ジャクスタピッド® カプセル)は2012年に米国食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)の承認を得て,2016年9月にわが国でもHoFHを効能効果として承認された経口の脂質異常症治療薬である.本薬剤は小胞体内腔に存在するミクロソームトリグリセライド転送蛋白質(microsomal triglyceride transfer protein;MTP)に直接結合して脂質輸送を阻害することにより,肝細胞および小腸細胞内においてトリグリセライド(triglyceride;TG)とアポBを含むリポ蛋白質の転送を阻害する.その結果として,肝細胞のVLDLや小腸細胞のカイロミクロンの形成が阻害されることにより,VLDLの肝臓からの分泌が低下し,血中LDL-C濃度を低下させる.
今回,我々はLDL-Aを行っているHoFH症例に対してロミタピドを導入した.導入前後での脂質プロファイルの変化や脂肪肝の変化などについて,報告するとともに,既報の臨床試験結果についても触れながら考察する.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。