巻頭言
冠動脈疾患,今世紀と共に去りぬ
The Lipid Vol.30 No.3, 1, 2019
先進国における成人の死因の原因の25%は動脈硬化性のプラークが原因で血管が閉塞する冠動脈疾患である.100年も前から臨床的に知られてきていたこの心血管病の発症は,この50年間は急上昇してきた.しかし,エポックメーキングな医薬品のおかげでこの上昇も抑えられてきている.
この特効薬となったのが「スタチン」とよばれるHMG-CoA還元酵素阻害薬である.スタチンは遠藤章博士によって古細菌から発見された物質である.高コレステロール血症に対する治療薬としてのスタチンの普及によって心血管の疾患の発症が大きく減少し,「動脈硬化症へのスタチンの効力は,あたかも,感染症に対するペニシリンの効力と同じである.」(Roberts WC. 1996, Am J Cardiol.),「冠動脈疾患,今世紀と共に去りぬ.」(Brown MS, Goldstein JL. 1996, Science.)と,いわしめるほど,私たちの動脈硬化治療に大きく貢献してきている.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。