特集 性ホルモンと血管脂質代謝
Ⅱ.エストロゲン 2.エストロゲンと脂質代謝,動脈硬化症(女性,臨床)
The Lipid Vol.29 No.3, 27-35, 2018
女性は月経が不規則になった周閉経期から脂質代謝が大きく変化する. エストロゲンの低下は,LDL粒子数,TG,小型LDL粒子の増加をきたし閉経後に冠動脈疾患が発症する可能性がある.エストロゲンが脂質代謝に与える影響は,製剤,投与経路,投与量によって異なり,経口では脂質代謝に用量依存的に影響し,TGを増加させ血管炎症に促進的に作用し,静脈血栓塞栓症リスクを増加させる.経皮では肝臓での初回通過効果がなく,TGの増加はみられず,抗酸化効果や大型のLDL粒子の産生によって粥状硬化の進展を抑制し,静脈血栓塞栓症リスクを有意に高めない.閉経後早期のエストロゲン投与は動脈硬化の進展を抑制するが,閉経後10年以上経過してからでは有意な抑制がみられない.
「KEY WORDS」エストロゲン,LDL-C,HDL-C,動脈硬化
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。