特集 プレシジョンメディシンの現状と未来
Ⅰ.脂質代謝特論 1.動脈硬化とプレシジョンメディシン
The Lipid Vol.29 No.2, 14-21, 2018
動脈硬化は,複数のcommon variant(SNPなど)と複数の環境リスクが組み合わさって発症素因を形成する「多因子疾患」である.Common variantに関しては,ゲノムワイド相関解析により約70の相関遺伝子領域が判明したが,その多くは脂質異常症など動脈硬化症のリスク因子を規定する遺伝子領域である.これらSNPs以外では,SNPsよりも頻度は低いがインパクトのやや強い「rare variant」が動脈硬化の遺伝的リスクである.多くはLDLR,APOC3など脂質代謝関連遺伝子のrare variantである.遺伝的に規定された脂質代謝異常が動脈硬化のリスク因子として作用していることがわかってきた.遺伝的リスクのさらなる同定,同定されたvariantの機能解析,variantと環境要因とを変数に組み込んだリスク予測アルゴリズムの構築が今後の大きな課題である.
「KEY WORDS」common disease,genomewide association study(GWAS),single nucleotide polymorphism(SNP),rare variant,dyslipidemia
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