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タンジール病と動脈硬化

増田大作

The Lipid Vol.28 No.3, 4-8, 2017

タンジール病(Tanjier disease)はアメリカ合衆国バージニア州タンジール島に住む少年の扁桃がオレンジに腫れあがっていることから発見され,同部位には異常な泡沫細胞が多く含まれており,さらに家族や周辺住民において血清HDLコレステロール(HDL-C)濃度が異常に低値であることが発見され,この疾患名が付けられた1)。常染色体劣性遺伝する遺伝性疾患であるため世界的にもまれで,わが国でも十数家系程度の報告しかみられていない。HDLの主たる機能は,末梢組織,特に動脈硬化プラークで過剰となったコレステロールの再回収であり,このコレステロールがHDL粒子ごと肝臓へ取り込まれるコレステロール逆転送系(reverse cholesterol transport;RCT)は動脈硬化を抑制する。RCTの第一段階は肝細胞あるいは小腸上皮細胞で産生されたアポ(リポ蛋白)A-Ⅰが血中へ遊離し,血管壁に存在するマクロファージ上のATP binding cassette transporter A1(ABCA1)との結合を介してコレステロールエステルを受け取るが,本疾患ではABCA1の遺伝子異常により機能喪失をきたす2)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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