巻頭言
FHの病態解明とともに進んだ脂質低下薬開発
The Lipid Vol.28 No.3, 1, 2017
2016年は,家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia;FH)にとって記念すべき年となった.1年の間にFHを対象疾患とする薬剤3種類,すなわちPCSK9阻害薬が2種類,さらにMTP阻害薬が上市されたのである.
FHは,Goldstein JL,Brown MSらによりその分子レベルでの病態が明らかにされた.LDL受容体遺伝子変異により高LDL-C血症が引き起こされることが明らかになり,新しいコレステロール代謝制御メカニズムが明らかになった.さらに,遠藤章先生らにより,コレステロール合成阻害によりLDL受容体活性上昇を介したスタチンが上市された.この発見が,FHにおける動脈硬化症の予防を可能にしただけではなく,世界中の高LDL-C血症患者に対して,動脈硬化性心血管疾患予防を可能にした.しかしながら,FHや高いリスクを有する高LDL-C血症に対しては,必ずしも効果は十分ではなかった.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。