<< 一覧に戻る

巻頭言

パスツールの4象限

永井良三

The Lipid Vol.23 No.4, 1, 2012

世界経済が混乱する中で, わが国もいまだにバブル崩壊後の不況から抜け出せない. 失われた10年といわれるが, すでに20年が経過した. 2011年の国民所得は, ピークだった1997年の88%にまで低下した. その影響は科学技術政策にも及び, 科学技術イノベーションが叫ばれるようになった. 多くの公的資金を用いて研究をする以上, 研究者は何らかの社会的責任を負っている. しかし実用化研究はイノベーションに結びつく確率が低く, そればかりを追っていると基礎研究がおろそかになる. アカデミアで生きる研究者にとって, 基礎研究の実績なしにキャリアを作ることは難しい. 一方, 研究者は, 限定された実験系におけるメカニズム研究が, ゴールのない幻想を追及しているという印象を社会に与えないように注意しなければならない. 情報爆発時代に入った今日, データを得るのみで満足せずに, 科学的な物語の新たな切り口を提示することが重要である.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る