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新しいマクロファージ

Ⅰ.生理機能 コレステロールのエステルと水解

大須賀淳一

The Lipid Vol.22 No.2, 44-47, 2011

Summary
 マクロファージにおけるコレステロールエステル(CE)の蓄積が持続すると,動脈硬化の初期病変である泡沫細胞の形成につながる.CEの生成はACAT-1が担い,CEの水解はHSLとNCEH1の両者の寄与によることが明らかになった.ACAT-1の欠損により泡沫化は抑制され,HSLとNCEH1の欠損により泡沫化は促進されたからである.これら諸分子を調節する因子や化合物は泡沫化や動脈硬化の予防・治療に有用と考えられる.

Key words
●コレステロール ●コレステロールエステル ●ACAT-1 ●HSL ●NCEH-1

マクロファージの泡沫化現象

 虚血性心疾患の基礎となる粥状動脈硬化症は,血管壁での脂質蓄積に引き続く病的な細胞反応によって形成される.この最初の過程はマクロファージによる脂質の蓄積である.動脈硬化病変で観察される泡沫細胞はコレステロールエステル(CE)を蓄積したマクロファージである.泡沫過程を制御できれば動脈硬化過程を初期段階で抑制できる可能性を秘めており治療戦略上魅力的である.
 脂質異常症は動脈硬化症の危険因子であり,ことさら糖尿病においては脂質異常症の是正は動脈硬化症の発症・進展を抑制できる点で効果的な治療方法である.しかし,現実の治療では十分な血清脂質のコントロールが得られたとしても,マクロファージの泡沫化は避けられない問題でもある.
 内皮下に侵入したマクロファージは,変性したリポ蛋白(主として酸化LDL)をSR-AⅠ/Ⅱをはじめとした種々のスカベンジャー受容体を介して細胞内に取り込む.取り込まれたリポ蛋白のCEは,ライソゾームの酸性リパーゼ(LAL)により遊離コレステロール(FC)に水解される.このFCは小胞体でアシルCoA:コレステロール・アシルトランスフェラーゼ-1(ACAT-1)により再エステル化されCEとなり細胞質内に蓄積される(図).

細胞質には中性領域に至適pHをもつ中性コレステロールエステル水解酵素(neutral cholesterol ester hydrolase;nCEH)がありCEはFCに水解される.さらに,FCは細胞外にあるアポA-Ⅰなどのヘリックス型アポ蛋白へATP-binding cassette transporter A1(ABCA1)を介してeffluxされる.したがって,現在のコンセプトでは,細胞内のCE蓄積量はACAT-1,nCEH活性とABCA1によるeffluxのバランスにより規定されると考えられている.こうした観点からACAT阻害薬は開発され,ABCA1の活性化をねらった治療法の開発が展開しているが,nCEH活性促進薬の開発は皆無に近い.この原因としてnCEH活性を発揮する蛋白がマクロファージより単離されなかったことがあげられる.しかしながら,間接的な証拠から主として脂肪組織に発現するホルモン感受性リパーゼ(hormone-sensitive lipase;HSL)が,マクロファージのnCEH活性を担っていることが示唆されてきた.

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