「はじめに」近年, さまざまな多因子疾患の遺伝因子が急速に明らかになってきたが, その原動力は紛れもなく「ゲノムワイド相関(関連)解析(genome-wide association study:GWAS)」と呼ばれる手法である. しかし, GWASの論文は「疾患研究者」の立場からはとっつきにくく, 「自分の欲しい情報」を的確に得ることが難しい. ここではそうした視点からGWASの論文をどのように読むか, を考えてみたい. 「I. GWASとは」GWASの基本概念は, その名のごとく, 「ゲノムワイド」な「相関(関連)解析」ということである. 「ゲノムワイド」解析とは, 遺伝子の機能に関係なく, ゲノム全体にわたって, 病気と関係するゲノム領域を探す網羅的な解析である. 多因子疾患病の遺伝因子の研究の主流であった候補遺伝子アプローチが, 疾患に関係する分子に注目し, その遺伝子の多型や変異を探索する「仮説主導型」「ボトムアップ型」であるのに対して, ゲノムワイド解析は, 「データ主導型」「トップダウン型」のアプローチである.
「Key Words」GWAS,研究デザイン,再現性,分子ネットワーク,データベース