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糖尿病と救急医療

脳卒中の急性期治療と血糖管理

長谷川泰弘

Diabetes Frontier Vol.22 No.6, 629-633, 2011

はじめに
 脳卒中発症早期に高血糖を呈する患者は多く,糖尿病の既往のない脳卒中患者でも40~60%に高血糖がみられる1)-3)。年齢,脳卒中の重症度,脳卒中病型にかかわらず,急性期高血糖は不良な転帰,機能予後不良と有意に関連し1)4)-6),プラスミノゲンアクチベータ(tPA)による血行再開療法においても,出血性梗塞の発症,転帰不良と関連することが知られている7)。しかし,脳卒中急性期の高血糖を何らかの形で是正する行為自体が脳保護的に働くのか,そして結果的に脳卒中の転帰改善に寄与するのかというきわめて単純な,しかし最も重要な問いに答えうる証拠はいまだ得られていない。むしろ,厳格な血糖管理は低血糖を招き転帰不良につながる危険性を指摘するものもあり,急性期脳卒中治療における血糖管理についてはいまだ意見の一致をみていない。本稿では,脳卒中後の血糖管理に関する最近の臨床研究の成果をまとめ,脳卒中急性期の血糖管理について概説する。

key words
脳卒中/高血糖/インスリン

Ⅰ.入院時血糖値と転帰(断面調査)

 連続1,446例の急性期脳梗塞患者の入院時血糖値と転帰との関係を検討したNtaiosらの報告によれば,入院時血糖値は1年後の機能予後と独立して関連すること,両者には5mmol/L(90mg/dL)にnadirをもつJカーブ現象がみられ(図1),入院時血糖値が,3.7~7.3mmol/L(66.6-131.4mg/dL)を呈した患者の転帰が最も良いことが示されている8)。

同様に脳出血でも,高血糖,低血糖の両者が転帰に悪影響を及ぼすことは知られており9),断面調査でみる限り出血でも梗塞でも脳卒中急性期の血糖値は,正常血糖であることが良い転帰をとることがうかがえる。
 tPA静注療法は,脳梗塞治療の最も有効な治療として確立しているが,同療法を受けた患者の入院時血糖値と転帰との関係が,インターネットベースの前向き観察研究Safe Implementation of Treatments in Stroke, a prospective internet-based audit of the International Stroke Thrombolysis Registry(SITS-ISTR)に登録された16,049例のデータを用いて解析されている10)。入院時血糖値別に3ヵ月後の転帰(修正Rankinスケール<3)との関連,症候性出血性梗塞との関連をみると,入院時血糖値が高いほど死亡率が高く,自立できる率が減少し,出血性梗塞が増えており,これらは独立して寄与していたと報告されている(図2)。

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