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アレルゲンと免疫療法の再考

典型的アレルギー疾患における免疫療法―ハチアレルギー―

Immunotherapy for Hymenoptera venom allergy

平田博国林ゆめ子渡部峰明福田健

喘息 Vol.24 No.1, 28-35, 2011

Summary
 ハチアレルギー患者に対する根本的治療としてハチ毒エキスを用いた免疫療法が古くから知られており,諸外国や本邦において,その有効性ならびに安全性について多数報告されている。しかし本邦では,いまだ保険適応が認められていないため,一般の医療機関での治療は困難である。免疫療法の奏効機序として,遮断抗体として考えられている特異的免疫グロブリン(Ig)G4抗体の関与が考えられている。最近,免疫療法によって増殖・活性化された制御性T細胞から産生されるインターロイキン(IL)-10の作用によって,特異的IgG4抗体産生を惹起させることが示唆されている。将来的には,現在の免疫療法に比べてより患者負担を軽減させるため,ワクチン療法などの簡易的な新規治療の開発が期待される。

Key words
ハチアレルギー,疫学,ハチ毒エキス,免疫療法,奏効機序

はじめに

 本邦におけるハチ刺傷による死亡は年間20~30名と報告されており,その原因はショック死である。ハチ刺傷によるショック死の多くは,①ハチ毒に対し免疫グロブリン(immunogloburin;Ig)Eを介したアナフィラキシー(anaphylaxis)と,②一部にはIgEを介さない多量のハチ毒注入などの直接(toxic)作用によるアナフィラキシー様反応(anaphylactoid reaction)がある。これらのアナフィラキシーにおける全身症状への発現状況は同じであり,広義ではハチ毒によるアナフィラキシーとして扱われている。アナフィラキシー(様)反応の対策として,アドレナリン注射が最も重要であり,自己注射キット(商品名:エピペン®)の携帯が必要である。さらに,ハチアレルギー患者ではもう1つの治療として体質改善を目的とした免疫療法が知られているが,筆者らは20年間で100数十名以上に施行し,有効性および安全性についてすでに確認している。しかし,いまだ保険適応が認められていないため,一般の医療機関での治療は困難である。
 本稿では,ハチ刺傷におけるアナフィラキシーの疫学と根本的治療法のハチ毒エキスを用いた免疫療法について,最近の知見から文献的考察を加え述べたい。

Ⅰ 死亡統計

 厚生労働省に届けられたアナフィラキシーによる死亡者の統計によると,本邦では年変動があるものの毎年約50~60名の死亡者が報告されている1)。アナフィラキシーによる死亡の詳細は,ハチ刺傷によって毎年約20~30名,薬物では約10~20名,食物で数名ほどの死亡者が報告されている(図1)1)。

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