<< 一覧に戻る

特集 がんバイオマーカーの探求

エクソソームによるがん診断法の開発

藤田雄門田宰

Pharma Medica Vol.38 No.7, 25-28, 2020

がん細胞をはじめとする,生体内のあらゆる細胞が分泌する細胞外小胞顆粒(extracellular vesicles)であるエクソソーム(exosome)の研究は,基礎的研究からまさに臨床応用に向けた動きが活発化している。従来のサイトカインやケモカインなどの細胞間情報伝達手段に加わる新たなパラクライン因子として,エクソソームはmicroRNA(miRNA)を含む核酸や蛋白質などを内包し,受け手細胞に移送され遺伝子発現などを制御する。この事実は,生命の根源的な理解につながるばかりか,がん,免疫,老化および線維化などのさまざまな病態解明,また疾患特異的な体液診断を可能にさせ,幅広い研究分野に貢献しうるブレークスルーとして世界中の研究者やバイオ産業の注目を集めている。特に,がん領域におけるエクソソーム研究は,内包するmiRNAや蛋白質の解析を中心として,がん転移の分子病理学的解明,腫瘍免疫応答の制御,迅速がん診断における検出技術の有用性を示した基礎研究および臨床知見が蓄積してきた。本稿では,体液診断におけるエクソソームについて,その検出技術を紹介しながら,特に免疫チェックポイント阻害薬とバイオマーカーとしてのエクソソームに焦点を当て,最新の知見を概説する。
「KEY WORDS」細胞外小胞顆粒,エクソソーム,microRNA,免疫チェックポイント阻害薬

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る