1993年のvon Hippel-Lindau(VHL)遺伝子の同定以降,さまざまな腎細胞がんの原因遺伝子が報告され,淡明細胞型腎がんではVHL遺伝子,乳頭状腎がんではMET遺伝子やFH遺伝子,嫌色素性がんではBHD遺伝子といったように遺伝子診断は病理組織診断の裏付けに利用されるようになった。2008年の分子標的薬の登場により遺伝子診断はさらに脚光を浴びたものの,それ以降も依然として病理組織型を元に治療方針が決定されていた。しかしこの状況を一変させる大規模研究が報告された。全米規模での統合的大規模がん研究[The Cancer Genome Atlas(TCGA):全ゲノムの塩基配列決定,遺伝子のコピー数測定,DNAメチル化領域の測定,染色体転座の解析,メッセンジャーRNA(mRNA)・マイクロRNA(miRNA)・蛋白の発現量測定に臨床病理学的データを統合した研究]である。
「KEY WORDS」腎細胞がん,TCGA,がんパネル,腫瘍内不均一性