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特集 糖尿病治療薬の循環器系への作用~その光と影~

SGLT2阻害薬

田中敦史野出孝一

Pharma Medica Vol.36 No.6, 52-56, 2018

2015年に発表されたEMPA-REGOUTCOMEにおいて,SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンが糖尿病患者を対象とした大規模臨床試験において初めて心血管イベントおよび死亡,さらには心不全入院を有意に抑制した結果が示され,糖尿病専門医のみならず循環器専門医など非糖尿病専門医が大きな衝撃を受けたのは記憶に新しい。そのきわめて大きなインパクトから,SGLT2阻害薬が心血管に及ぼした作用メカニズムに関する推論・実証が多くの研究者によって行われるようになった。その後,2017年に発表されたCANVAS(CANagliflozin cardioVascular Assessment Study)Programにおいてもやはり心血管イベントおよび心不全入院の抑制効果が認められたことにより,SGLT2阻害薬は特に心血管イベント高リスクの糖尿病患者における心血管イベントの抑制および心不全の予防効果に優れている可能性が示唆された。その他の糖尿病治療薬における大規模臨床試験の結果なども踏まえ,現在世界中の関連する治療ガイドラインにおいて糖尿病治療薬の個別化が進み,従来以上に患者の病態や心血管リスクに応じての糖尿病治療薬の選択が求められるようになってきた1)。本稿では,このようなトレンドの大きな引き金を引くきっかけとなったSGLT2阻害薬に関して,大規模臨床試験の結果から読み取れるその作用機序と,今後の循環器診療への応用へ向けた課題などについて概説したい。
「KEY WORDS」SGLT2阻害薬,EMPA-REG OUTCOME Trial,CANVAS Program,心不全

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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