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特集 膵癌への挑戦

Borderline resectable膵癌に対する拡大膵切除

島田和明奈良聡岸庸二江崎稔

Pharma Medica Vol.35 No.1, 47-51, 2017

Borderline resectable(BR)膵癌は,米国では当初そのまま手術すると予後不良であるためBorderline unresectableと捉え,非切除療法を先行すべきであると位置づけされた1)2)。NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドライン(表1)3)では切除可能境界例と訳されているが,切除を推奨しているわけではない。またNCCNガイドラインの大きな問題点は,「切除可能境界」の範疇に動脈,静脈が同一レベルで記載されている3)ことである。わが国では動脈浸潤がなければ門脈浸潤が認められても積極的に切除を行ってきた歴史があり,この点で混乱が生じた可能性がある。第37回日本膵切研究会の多施設アンケート集計(78施設)では,BR膵癌を無条件で切除を行う施設は42%,門脈因子(静脈)のみであれば切除対象とするが動脈因子でのBR膵癌は切除の対象にしないと答えた施設が25%であった4)。動脈と門脈の進展は,進展様式からも区別して考えるべきである。動脈因子での「切除可能境界」に対し切除を先行しても病理組織学的治癒切除(R0)切除となる頻度は低く,術後抗癌治療を完遂できなければ治療成績は不良である。
「KEY WORDS」Borderline resectable膵癌,拡大膵切除,NCCNガイドライン

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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