特集 膵癌への挑戦
膵IPMNの歴史と将来の展望
Pharma Medica Vol.35 No.1, 9-12, 2017
膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN)は,大橋ら1)が1982年に提唱した「粘液産生膵癌」をより広く臨床病理学的見地から捉えたものである。大橋らは「粘液産生膵癌」の特徴として,粘液による①Vater乳頭部の腫大,②乳頭口の開大,③乳頭口からの粘液の排出,④主膵管の著明な拡張と陰影欠損像,をあげ,その後さらに⑤予後のよい膵癌,という特徴をあげて,通常の膵癌と異なる疾患概念であることを明らかにした。
1980年代には症例の発見と報告が多くなされ,疾患概念の確立のための議論がわが国で熟成していった。すなわち,「粘液産生膵癌」は腺腫と癌を含むことから「粘液産生膵腫瘍」という文言に変遷し,さらに主膵管の拡張と乳頭口開大の所見を呈するもの(後のIPMN主膵管型)を特に「いわゆる粘液産生膵腫瘍」と呼ぶようになった。その理由は,特徴の1つにあげられていた,主膵管拡張のない,分枝膵管の拡張だけがみられる膵管拡張型囊胞腺腫(duct-ectatic type,後のIPMN分枝型)が少し遅れて報告され2)3),並行して注目されてきたからである。
「KEY WORDS」IPMN,MCN,high-risk stigmata,worrisome features
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