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特集 大腸癌診療 update 2016

抗EGFR抗体のエビデンス update

山本祥之山田武史森脇俊和兵頭一之介

Pharma Medica Vol.34 No.12, 51-56, 2016

上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor;EGFR)に対するモノクローナル抗体であるセツキシマブやパニツムマブは,EGFRからのシグナル伝達の下流に存在するKRAS遺伝子のエクソン2(コドン12,13)に変異を有する症例に対しては無効であることが以前より知られていた。加えて,KRAS遺伝子エクソン3(コドン59,61),エクソン4(コドン117,146)およびNRAS遺伝子エクソン2,3,4領域に変異を有するminor RAS遺伝子変異症例に対しても同様に治療効果が期待されないことが,近年の複数のランダム化比較試験の後ろ向き解析により判明した(図)1)。2014年4月には日本臨床腫瘍学会より「大腸がん患者におけるRAS遺伝子(KRAS/NRAS遺伝子)変異の測定に関するガイダンス第2版」が発表され,これらのRAS遺伝子変異を検出する検査法として,2015年4月より体外診断用医薬品「MEBGENTM RASKETキット」が臨床の現場で使用可能となった。現在では切除不能・再発大腸癌に対する初回薬物療法開始前にKRAS/NRAS遺伝子を測定し,all RAS野生型に対してのみ抗EGFR抗体を用いることが強く推奨されている。しかしながら,抗EGFR抗体を使用する最適なタイミングについては,大腸癌領域で使用可能なもう1つの抗体薬である抗VEGF(vascular endothelial growth factor)抗体との使用順序も含め,明確なエビデンスが存在していないのが現状である。
「KEY WORDS」RAS遺伝子,抗EGFR抗体,セツキシマブ,パニツムマブ

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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