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特集 高血圧を再考する:注目点とこれからの診療

厳格降圧(120mmHg未満)のこれから

赤坂憲楽木宏実

Pharma Medica Vol.34 No.8, 25-29, 2016

「Ⅰ.SPRINT試験の衝撃」昨年発表されたSPRINT(Systolic Blood Pressure Intervention Trial)研究1)は,世界に衝撃を与えた。すなわち,糖尿病,脳卒中既往者を除く50歳以上で1つ以上の心血管リスクがある者,あるいは75歳以上の高齢者を対象に行われた試験で,降圧目標を120mmHg未満とした強化治療群において,降圧目標を140mmHg未満とした標準治療群よりも心血管イベントが25%,総死亡が27%少なかったというものである。どちらかというとこれまで緩和される傾向があった降圧目標のなかで,新たに厳格降圧のエビデンスを示したということで注目を集める結果となった(図1)1)。一方でこのSPRINT研究には,あくまで米国の研究であり,血圧測定環境がわが国の一般的なものとは異なること,強化治療群のほうが低血圧,失神,電解質異常,急性腎障害が多いことなどの議論がある。特に高齢者では,むやみに積極的な降圧治療を行うのではなく,有害事象の発生に留意して個別に治療目標を設定して慎重に経過を確認しつつ,緩徐に治療を行うことが求められる。
「KEY WORDS」SPRINT試験,腎保護,心血管イベント抑制,Jカーブ減少,フレイル

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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