「はじめに」多発性骨髄腫は,悪性化した形質細胞(骨髄腫細胞)の骨髄内増殖を主病態とする血液疾患である。しばしば骨髄転移を引き起こす多くの固形癌(肺癌,前立腺癌,乳癌など)と同じく,骨髄腫細胞は骨髄ニッチ(骨髄微小環境)でさまざまな種類の細胞と相互反応をしている。その結果,骨髄腫細胞は増殖刺激や治療抵抗性などを獲得し,さらに骨髄ニッチを構成する細胞も骨髄腫細胞から分化や増殖の刺激を受けるという双方向でのシグナルループが介在している。したがって,骨髄腫細胞だけでなく骨髄ニッチを構成する細胞群の活性を抑制することは,間接的に骨髄腫細胞の増殖を抑制することにつながり得る。実際,最近開発されている治療薬は,骨髄腫細胞のみならず骨髄ニッチも治療標的にするものが少なくない。本稿では骨髄腫を専門としていない読者にも理解していただけるように,可能な限り平易に記述した。
「KEY WORDS」多発性骨髄腫,骨髄ニッチ,接着因子,サイトカイン,シグナルトランスダクション
「KEY WORDS」多発性骨髄腫,骨髄ニッチ,接着因子,サイトカイン,シグナルトランスダクション