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特集 肝癌の薬物療法

分子標的治療薬 新規の分子標的治療薬:現在進行中の臨床試験

Molecular-targeted drug therapy for HCC:ongoing clinical trial.

坂本康成奥坂拓志

Pharma Medica Vol.33 No.1, 37-41, 2015

「はじめに」肝細胞癌に対する全身化学療法は,手術,局所治療,肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization;TACE)の適応のない進行例に対して行われる。ソラフェニブは,Raf-1や,血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)や血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor;PDGF)などの,血管新生や細胞増殖に関わる受容体を阻害するマルチターゲット型チロシンキナーゼ阻害薬で,大規模なランダム化比較試験でChild-Pugh Aの進行肝細胞癌患者に対し,生存期間の延長効果を示した唯一の薬剤である1)2)。しかし,その効果や起こり得る副作用など,使用状況については十分に満足できるものではなく,より優れた肝細胞癌治療を求めて治療開発が行われている。ソラフェニブを凌駕する薬剤はいまだに現れていないが,本稿では最近,臨床試験が行われている分子標的薬剤に焦点を当てた。肝細胞癌の進行度により開発中の治療法を大きく分類すると,①BCLC(barcelona liver cancer group)分類StageAの肝細胞癌に対し肝切除術もしくはラジオ波焼灼療法といった根治治療を行った後の補助療法の開発,②BCLC分類StageBの肝細胞癌に対し,ソラフェニブを含め,TACEと併用して用いる薬剤の開発,③BCLC分類StageCの肝細胞癌に対しての一次化学療法,つまりソラフェニブ単剤療法を凌駕する治療法の開発,④一次化学療法が無効となった進行肝細胞癌に対しての治療法の開発,と分けられる。各Stageにおける分子標的薬剤の開発状況を,第Ⅲ相試験を中心に概説する。
「KEY WORDS」●ソラフェニブ ●ペレチノイン ●レンバチニブ ●c-Met阻害薬

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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