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NEXT DOOR 脂質管理の新しい潮流

No.5 脂質異常症の治療 新薬の臨床導入と可能性

吉田雅幸

Pharma Medica Vol.32 No.12, 83-85, 2014

スタチンによるLDLコレステロール(LDL-C)低下が,心血管イベント予防に有用であることは周知だが,スタチン治療を行ってもイベントリスクが十分に低減しないケースも存在する。このような残余リスクの解消を目指し,様々な薬剤の開発が試みられており,本邦においても数年以内にいくつかの新薬が臨床導入される予定である。そこで今回,動脈硬化性疾患の病態解明と治療法の開発に取り組んでおられる吉田雅幸先生に,脂質異常症に対する新薬の展望について伺った。

PCSK9阻害薬:さらなるLDL-C低下を目指して

◆本日は,本邦で臨床導入が予定されている新薬の話題を中心に,脂質異常症治療の展望についてお伺いします。まずは,2016年に臨床導入が見込まれているPCSK9 (proprotein convertase subtilisin/kexin type 9) 阻害薬について教えてください。
 家族性高コレステロール血症(FH)における第3の原因遺伝子として発見されたPCSK9(図1)1)は,様々な機能が示唆されており,脂質代謝領域ではLDL受容体の分解に関与することが分かっています(図2)1)。

本剤は,このPCSK9を阻害することでLDL受容体の分解を抑制し,血中のLDL-Cクリアランスを亢進させて脂質異常症を是正する,まったく新しい機序の薬剤です。
 スタチンはPCSK9の発現を増強することが分かっていますので2),本剤をスタチン治療に追加すれば,効率的にLDL-Cを低下させることができると考えられます。実際私たちは,スタチン治療中の心血管イベント高リスク患者を対象とした国内第Ⅱ相試験において,本剤投与による良好なLDL-C低下効果を確認しています3)。
◆PCSK9阻害薬のポジショニングについてはどのようにお考えですか。
 FHヘテロ接合体やスタチンでLDL-C管理目標値を達成できない患者さん,また,冠動脈疾患二次予防を目的とした患者さんなど厳格なLDL-C管理が求められるケースで,本剤は非常に重要な役割を担うことになると思います。世界における本剤の開発状況をみると,当初は,心血管イベント高リスク患者を対象にスタチンとの併用療法が検討されていましたが,安全性が高く認容性も良好なことが明らかになったため,スタチン不耐容性患者や中等~低リスク患者に対する単独投与での有用性も検討されるようになってきました。したがって,今後このような臨床試験データが蓄積されることによって,様々な重症度の脂質異常症に適応される可能性があると思います。
◆PCSK9阻害薬は,LDL-C低下以外の効果も示唆されているようですが,こちらについてはどのようにお考えですか。
 PCSK9の生理機能は完全には明らかにされていないため,多くの研究者が強い関心を持って様々な研究を行っています。そのような中で,PCSK9阻害薬がリポ蛋白(a)(Lp(a))を低下させることが報告されています4)。Lp(a)は血中脂質を増加させるだけでなく血栓形成の促進にも関与することから,今後,十分なエビデンスを基にLp(a)低下効果のメカニズムが解明されれば,心血管イベント抑制を目指す上で重要な知見になるでしょう。また,PCSK9は主に肝臓での作用が注目されていますが,血中にも存在しますので,本剤が血管内皮細胞や平滑筋細胞に対して影響を及ぼす可能性も考えられます。

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