<< 一覧に戻る

特集 乳癌診療の新しい展開Ⅰ

特集にあたって

戸井雅和

Pharma Medica Vol.32 No.4, 7, 2014

最近の乳癌診療は以前にも増してきわめて多様になっている. 基礎的, 病理学的知見を基に治療法を綿密に設計するようになり, BRCA1/2などの遺伝子診断が実地診療に組み込まれ, リスクを考慮した局所療法や予防的な治療を検討するようになった. 画像診断の進化はまさに目覚ましく, 画像診断と密に連携した手術あるいは薬物療法によって切除量の最小化や治療の最適化が図られている. 放射線治療の局所制御における重要性は一段と増し, 同時に病期, 腫瘍特性, 宿主要因などによって個別化される傾向もみせている. 治療の根治性と整容性を同時に保つオンコプラスティックサージェリーが日常臨床に浸透しつつあり, 保険適応とあいまって再建手術を受ける患者数は急増していると推測される. 薬物療法では, 新しい分子標的薬の開発が相次ぎ, 再発乳癌の治療体系に変化が認められる. 治療耐性を少しずつではあるが克服しつつあるのかもしれない. ホルモン療法, 抗HER2(human epidermal growth factor receptor 2)療法, 血管新生阻害療法に加えて, mTOR(mammalian target of rapamycin)阻害療法が併用療法として臨床に導入される. 原発乳癌の治療においては, サブタイプを考慮した化学療法の個別化が定着, さらに新規薬物療法の開発が行われている. HER2 enriched typeやtriple negative乳癌などホルモン受容体陰性乳癌では, 術前全身治療により高いpathological complete response(pCR)率が得られるようになった. 奏効例においては局所療法の縮小化, 個別化の傾向が顕著であり, 他方, 術前の治療効果を勘案した術後の薬物療法の個別化も現実化しつつある. さらに, 分子診断の導入やcirculating tumor cell(CTC)の検討も進んでいる. これら一連の動向は原発乳癌患者の予後改善に寄与し, 同時に毒性の軽減にも貢献すると考えられている. 乳癌診療はよりダイナミックに進化し, 科学的で患者に優しい診断法, 治療法が開発されている. 本特集は当代を代表する著者によって綴られたもので, 最新の情報, 知見を含み, 洞察に富んだものである.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る