特集 がんの分子標的治療:進歩と課題
特集にあたって
Introduction.
Pharma Medica Vol.31 No.11, 7, 2013
現在, 1999年から始まった分子標的治療は第2世代へと移行し, 抗体医薬はキメラ抗体からヒト化, ヒト型へ, さらにantibody-drug conjugate (ADC)といわれるものが開発されている. 一方, 低分子化合物のチロシンキナーゼを主とする阻害薬には, より強力かつ特異的または抵抗性を克服するものが出てきている. より有害事象の少ないものなどである. 本特集では, 米国食品医薬品局(FDA)で承認されて, 日本でも開発治験中のものや, もうすぐ使用できるようになるものに焦点をあて, これまでになかった標的やコンセプトに対する薬剤を中心にとりあげ, ご執筆には日本でも研究または治験での第一人者として知られている方々を選択させていただいた.今後の方向性や日本での現状も含めて, 全体的に網羅されていることと思う. 基礎では, 現在の低分子化合物のシグナル伝達阻害薬の耐性機序とそれを克服するための基礎研究の現状を, 肺癌では, 近年ALK, c-metを始めとして標的がさかんに細分化されていく傾向があるなかで次の標的として解析されつつあるBRAFについて, 変異とその克服などを中心に執筆いただいている. 臨床では, 免疫チェックポイント阻害抗体がメラノーマを中心としてFDAでは承認され, 次に併用療法へと進展している. メラノーマから肺癌, 腎細胞癌などに対して広く開発されており, 有望なPD-1/PD-L1の抑制がある. この2つの経路を含む, 3つの抗体医薬の開発は, ワクチンが不要になるのではないか, 少なくとも今後ワクチン単独の開発は不要になるのではないか, と思わせるほど有望である. この状況につき, メラノーマについては, 海外でご活躍中の先生に執筆いただき, PD-1については日本で発見された標的であり, その有望性を執筆いただいた. 最も多く開発されている血液腫瘍領域では, 次世代の薬剤開発に移行している. 2つを選択して執筆いただいた. また, 血液腫瘍領域からは他に2つ, 乳癌に対してもトラスツズマブ耐性例について, それぞれ大きく期待がかけられている薬剤につき執筆いただいた. いずれもホットであり, さらに今後も登場するだろうが, 今知っておくべき新たな薬剤として, 最も注目されているものに焦点をあてて, 企画させていただいた. 楽しんでいただければ幸いである.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。